掛布「見逃し三振は“悪”と決めつける指導者が多いけど…」3度ホームラン王を獲った“ミスター・タイガース”が明かす打撃論とは
3度のホームラン王に輝いた“ミスター・タイガース”こと掛布雅之。 現役引退後には阪神タイガースの二軍監督も務め、現在は野球解説者として活躍するなど、長く第一線で野球に関わっている掛布氏が『掛布の打撃論』を出版した。 同著から「見逃し三振」「代打の心得」「選球眼」など野球を観る時にも役立つ、バッターのポイントを解説する。 ※以下は『掛布の打撃論』(日本実業出版社)を元に再構成しました。
ネクストサークルでの準備
ネクストサークルは、いろんなことを考えないといけない場所です。打席での迷いを消すために、しっかりと頭の整理をしておく必要があります。ある程度、シミュレーションしながら、前の打者の結果を待つわけです。スコア、イニング、アウトカウントなどさまざまなことを頭に入れて、自分に何が求められているのかを理解しないといけません。三塁走者が生還する状況では、ホームの後ろに駆け寄って指示も出さないといけません。 もちろん、シミュレーションはネクストサークルに入るまでに行っています。私の場合はノーアウトなら6番目の打者になったときから心の準備を始めます。4番を打つとすると、8番打者が打席に立ったときからスイッチを入れるのです。ツーアウト満塁で打席が回ってくる可能性があるからです。その状況の中で何が起きてもいいようにベンチで頭を回転させるのです。
見逃し三振はOK
2ストライクに追い込まれれば、ある程度ストライクゾーンを広げて待ちます。それでも自分がボールと思った球で見逃し三振は仕方がありません。ボール球に手を出しての空振り三振よりましなぐらいです。 見逃し三振は「悪」と決めつける指導者が多いのですが、私はそう思いません。見逃し三振を意識しすぎると、フルカウントからの見極めが悪くなるばかりか、追い込まれる前に勝負したくなるので、初球から当てに行くような打者が増えてしまうのです。だから指導者が「見逃し三振でもOK」の方針を示すと、早いカウントでの仕掛け方に余裕が出ます。チームとして四球の数が増えるのは間違いありません。