掛布「見逃し三振は“悪”と決めつける指導者が多いけど…」3度ホームラン王を獲った“ミスター・タイガース”が明かす打撃論とは
代打は初球が大事
代打の鉄則として「初球から振れ」というのがあります。1打席勝負ですから、初球からタイミングを合わせて振れる準備をしておくのは大切です。1球振ることによって、タイミングの微修正もできますし、力みが取れるという効果もあります。 ただ、裏を返せば相手バッテリーも代打は初球から振ってくるとわかっているわけで、1球目は慎重に入ってきます。 打ち気にはやる打者心理を考えると、ストライクゾーンからボールになる球が有効です。その誘い球を見極められるかどうか。もちろん誘い球が失投になることもあります。甘いコースに来れば確実に仕留めて、誘い球には乗らない。初球から高い集中力で臨まないといけません。ボール球を見極めて、1ボールから始まるのか、ボール球に手を出して1ストライクから始まるのかでは状況が全然違ってきます。
選球眼の磨き方
一流の打者ほどボールを長く、ゆっくり見ることができます。私も調子のいいときは150キロのストレートが体感スピードで130キロぐらいの打ち頃の速さで見えていました。 逆に、調子の悪いときは130キロのストレートが体感スピードで150キロに見えてしまいます。体感と書きましたが、実際に感じるのは目です。目で速いか遅いか感じるので、目の動きというのがすごく大切になるのです。 打ちにいくときに頭が突っ込めば、向かってくるボールに対して目が衝突する状態になります。当然、スピードガン以上に速く感じます。逆にミートの瞬間に目が止まる状態、前の足を踏み込みながら、上体は少し後ろにのけぞる形でスイングできると、体感スピードを殺すことができるのです。 では、ストライク、ボールの見極めはいつするのか。マウンドからホームベースの距離は18.44メートルですが、見極めが悪い打者は投げた直後に振る、振らないを判断してしまいます。そうなると、ワンバウンドのボール球になる変化球にもバットが止まりません。 逆に、見極めがいい打者は判断を先延ばしにできます。マウンドとホームの間に架空の「額」があるとイメージしてください。そこを通過する球はストライク、外れていればボールという感じです。その額の位置が、いい打者ほどホーム寄りにあるのです。高低、左右のコースを絞るときも、この額を通過するときに判断するのです。 協力:日本実業出版社 日本実業出版社 Book Bang編集部 新潮社
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