「岡ちゃん、本当にオリンピック行けるぞ」岡崎慎司が“クビ候補”から一気に日本代表に駆け上がった日「あの衝撃は今も忘れられない」
今シーズン限りでの現役引退を表明した岡崎慎司(37歳)。日本代表歴代3位となる50得点を記録した偉大なストライカーの歩みを、新人時代からサポートするトレーナー杉本龍勇(たつお)氏の証言で振り返る。(NumberWebインタビュー全2回) ちょっと、いや、かなり心配だった。 【画像】20年前と全然変わらない19歳岡崎慎司がエモすぎ! めっちゃ懐かしいロン毛時代、プレミア初得点シーン覚えてる? 俊輔、憲剛、ホンダ、ウッチー、真司…みんなに愛されまくった“岡ちゃん”の歴史を全部見る(100枚超) 2005年、チームが始動したばかりの頃のことだ。この年、清水エスパルスのフィジカルコーチに就任した杉本龍勇は、岡崎慎司という背番号23の高卒ルーキーの動きを見て、面食らった。杉本自身にサッカー経験はない。それでも、はっきりわかった。 「一言で表すなら、へたくそ。見た目もプレーも、田舎から上京したばかりの少年という感じで。正直、どうしてこの子がプロになれたんだろう、1年でクビになっちゃうんじゃないかって思っていました」 同じ高卒新人の枝村匠馬や青山直晃、岩下敬輔と比べて、ボールタッチの技術も身体能力も劣っている。さらに陸上の短距離ランナーとしてバルセロナ五輪にも出場した杉本から見て、明らかな欠点があった。FWとしてのスピードが足りない。 「岡ちゃんは、とにかく足だけで走っていた。頑張り屋だから、滝川二高時代も、チーム練習が終わった後に、1人で何本も何本もダッシュを繰り返していたそうです。でも、下手な走り方で練習すればするほど、もっと下手になるんです」 ただし、「へたくそ」で「鈍足」な新人FWは、底抜けに明るかった。リーグ戦開幕が間近に迫り、新加入選手もようやくチームに馴染んできた頃だ。岡崎は杉本のもとへやって来て、目を輝かせながら言った。 「俺、とにかく足が遅いんで、足が速くなりたいんです!」 自分の短所と、真正面から向き合える。これぞ、岡崎の武器の一つだった。 「プロになって、スピード不足を解消するには自助努力だけではどうにもならない、手詰まりだってことに気づいたのだと思います。アスリートは、自分の長所を伸ばそうとするタイプか、短所を改善しようとするタイプかに分かれます。岡崎は、後者。自分の弱点を見抜いて、最大限の努力をする。この発想と行動力が、強みなんでしょうね」 この年、岡崎のリーグ戦出場は1試合、11分間のみ。カップ戦を含めてもわずか5試合でしかプレーできなかった。 シーズンが終わり、杉本はチーム全員に呼びかけた。 「オフの間、浜松で自主トレをやるよ。誰でも参加していいよ」 手を挙げたのは、岡崎ただ一人だった。 「誰の言葉とトレーニングを信頼するべきか。岡崎は、それを見抜く力に秀でていたのだと思います。別に僕の指導が優れているとかではなくて、岡崎は自分にはどんな練習が必要で、どんな指導を受けるべきか分かっていた。最近のサッカー界では、小手先のテクニックや最新の施設を前面に出して、ビジネスばかり意識した胡散臭いトレーナーも多いですし、それに騙されてしまう選手もたくさんいます。でも、シーズン前に大切なのは、開幕してから技術や能力を発揮するための土台を作ること。リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドも、チームが始動する前は、ほとんどボールを触りませんからね。岡崎は、それを直感的に理解していたのだと思います」
【関連記事】
- 【続きを読む/後編】岡崎慎司に激怒?「ふざけんな!香川真司の名前を出すんじゃねえ」絶対にサボらなかった男へ“たった一度”のお説教「第二の岡崎を育成して」
- 【画像】20年前と全然変わらない19歳岡崎慎司がエモすぎ! めっちゃ懐かしいロン毛時代、プレミア初得点シーン覚えてる? 俊輔、憲剛、ホンダ、ウッチー、真司…みんなに愛されまくった“岡ちゃん”の歴史を全部見る(100枚超)
- 【提言】「鎌田大地がやるのも面白い」岡崎慎司が提案したサッカー日本代表“これからのキャプテン像”とは?「ベテランにやってほしくない」
- 【話題】「俺んち、泊まれば?」遠藤航に密着TVディレクターは見た…リバプールで愛されるまでの“壮絶な1カ月”「ファウルしないとかあり得ない」
- 【この表紙覚えてる?】バーディに飛びつくレスター岡崎慎司の“衝撃”写真《Number画像》