大谷翔平は総額268億円の巨大契約でエ軍残留か、それとも電撃トレードか…マドン監督解任の裏事情から透けて見える“今後”
仮に今後、プレーオフを逃したとしても、最後まで大谷が昨年口にした“ヒリヒリする”戦いを続けられれば、エンゼルスは今オフ、大谷と契約延長する可能性は高まるが、復調の兆しを見せている大谷が今後、投打で数字を伸ばすなら、それはそれで、交渉を複雑にする。 前出のディジオバンナ記者は、「前例がないので、相場はあってないようなもの」と断りつつ、「年俸5000万ドル(約67億円)の3年、もしくは4年契約」と、エンゼルスが提示するであろう具体的な条件を口にした。だとすれば来季以降、向こう3年間は、マイク・トラウト、アンソニー・レンドーン、ライセル・イグレシアス、大谷の年俸総額が約1億3500万ドル(約181億円)に達する。 チームの年俸総額が2023年は2億3000万ドル(約310億円)、24年は2億3300万ドル(約312億円)、25年は2億3700万ドル(約317億円)を超えるとぜいたく税がかかる。エンゼルスがそのペナルティを払わない方針を撤回しない限り、残り約1億ドル(約134億円)で36選手の年俸をまかなう必要がある。 それは現実的なのか? 「不可能ではないが、優勝を狙う戦力を揃えられなくなる」とMLB.COMのレット・ボリンジャー記者。 「ノア・シンダーガードとの再契約はあきらめたほうがいい」 仮に大谷がホームチームディスカウントを受け入れたとしても、年俸は3000万ドル(約40億円)前後になると予想され、補強の柔軟性を劇的に高めるほどではない。やはり、レンドーンの3850万ドル(約51億6000万円、26年まで)とイグレシアスの1600万ドル(約21億4000万円、25年まで)の負担が重い。 もちろん、大谷がFA(フリーエージント)になるのは23年のオフなので、契約延長を先延ばしすることも可能だが、「FAになる前に契約延長の話がまとまらなかったら、エンゼルスはあきらめるだろう」とディジオバンナ記者は指摘する。 「FAになったら、エンゼルスは分が悪い。ユニバーサルDHがトドメになった」 今年からナ・リーグにも指名打者制が導入され、大谷はナ・リーグのホームゲームでもスタメン出場できるようになった。それはメリットである一方、ナ・リーグのチームが、大谷を獲得する際の障害を取り払うことにもなった。ボリンジャー記者も、「ヤンキース、レッドソックスだけでなく、ドジャースやメッツ、ジャイアンツも大谷獲りに参戦する可能性がある。資金力以上に、彼らには『一緒にワールドシリーズ制覇を目指そう』というカードがある。エンゼルスとしては、来年の開幕までが勝負。合意できなければ、来年のトレード期限までにトレードするのではないか」と予想した。 今季、チームがプレーオフに進むなら、契約延長の確率が高まる一方で、チーム全体の年俸総額をどうコントロールするのか、という課題が浮き彫りとなる。このまま失速すれば、そもそも大谷との契約延長の可能性は低くなる。 ミナシアンGMはいま、どう向き合おうとしているのか。 ビジネスに徹するなら、大谷の価値が最高に高まったところでトレードを仕掛け、5人ほどプロスペクトを獲得することも選択肢だが、2年目のGMにそれができるのか? ベーブ・ルースをヤンキースにトレードしたハリー・フレイジー(当時のレッドソックスオーナー)は、ルースを売って得た資金で「ノー・ノー・ナネット」というブロードウェイ・ミュージカルを制作したとされる。 ミナシアンGMの気持ちが大谷のトレードに傾くなら、SNSにはこんなハッシュタグが乱立しそうだ。 「ノー・ノー・ペリー(ミナシアンGM)」 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)