アップルが折れたのか-インドネシアの強硬策、工場誘致で逆効果にも
(ブルームバーグ): 米アップルが対インドネシア投資を10億ドル(約1570億円)に引き上げたことを受け、プラボウォ政権は勝ちを収めたと考えている。最新スマートフォン「iPhone 16」の国内販売に待ったをかけたことで得た勝利だが、投資呼び込みという観点からは逆効果にもなりかねない。
トランプ次期米大統領が関税強化をちらつかせる中で、他の東南アジア諸国は中国から生産拠点を移す投資家を厚遇し、積極的に製造業を誘致しようとしている。
こうした状況下で、インドネシア政府が保護主義的な戦略を用いて外国企業に国内で工場を建設するよう迫っていることに対し、アナリストらは警鐘を鳴らしている。
「今は強硬策を取る最善のタイミングではない」とインドネシア政策研究センターのクリスナ・グプタ上級研究員は指摘。「危険なゲームになりかねない」との考えを示した。
インドネシアはいわゆる現地調達要件を振りかざし、主力製品の販売許可を得たければ、アップルは1カ月以内に投資予定額を1000万ドルから10億ドルに引き上げるべきだと主張していた。
ブルームバーグ・ニュースは先に、アップルは新たな提案の一環として、同社サプライヤーの1社がバタム島に「AirTag(エアタグ)」の製造工場を建設すると申し出たと報じた。
バンク・セントラル・アジアのチーフエコノミスト、デービッド・スムアル氏(ジャカルタ在勤)によると、これは政府が外国からより多くの直接投資を確保するための手法。特に2億7000万人の「インドネシア市場へのアクセス維持に大きな利害関係」を持つ企業を対象としているという。
「この政策はコストを押し上げ、規制を複雑にすることに加え、国内サプライヤーがグローバル基準を満たす能力に欠けることが多い分野、特に先端テクノロジーに依存する産業における現地調達義務化により、外国からの直接投資を妨げる恐れもある」と同氏は分析している。