45歳の漫画家が運転免許を取って初めてわかった「保護者の集まりで誰とも話さず立っている父親たちの境地」
「女性は運転が苦手」といわれることがあるが、なぜなのか。漫画家の田房永子さんは「45歳で初めて運転免許を取った。車を運転するようになって気付いたのは、車の運転は『男性的なマインドが必要』ということだ」という――。 【図表】運転で初めて見えた「見えないカベ」の向こう側の世界 ■なぜ「女性は運転が苦手」とされているのか 今年45歳で生まれて初めて教習所に通いました。 多くの教習所には「レディースプラン」という、女性限定のコースがあります。たいてい「検定試験に何度落ちても再試験料無料」などの特典が付いています。「女性は男性よりも運転が苦手」という前提があることを知りました。 改めて友人や知人に聞いてみると、ビックリするくらいペーパードライバーが多いことが分かりました。「20代の時に免許をとったけど、20年運転してない」という女性がとても多いのです。 教習もあと卒検を残すのみとなった頃に、男性教官からこう言われました。 「女の人はデパートに行ったら何を買うかいつまでも迷うでしょ。こう言っちゃなんだけど、男性のほうが決断力や判断力があるんですよね。女性は運転が苦手なのは仕方ない」 女性である私を励ますために言ったのだと思いますが、私はその時、まだ運転中にうまく会話することができず、「はい、なるほど」とだけ答えました。 ■車の運転=刀を持ったサムライ だけど私は、2カ月近くの教習所通いで、その「女性は運転が苦手説」について気付いたことがありました。 運転してみて思ったのは、「車の運転って侍(サムライ)みたいだ」ということです。侍っぽい動作、つまり「男性的仕草」が必要な、車の運転という作業。それを多くの男性が得意なのは当たり前であり、多くの女性にとっては単に不利なだけなのでは? と思うようになっていました。 車という、人に危害を与える恐れのある物品の中に入り、その中から世界を見て走る。そんな風に自分自身が街の中で“危険な存在”となる感覚が、刀という、人に危害を与える恐れのある物品を携帯し行動する侍っぽいと思ったのです。 車道は、自分と同じ刀を持っている侍たちが往来していて、自分にも危険があるかもしれない。自分が危険な存在であるからこそ、その視界(フロントガラス)を冷静に見極め、むやみに弱き者(歩行者)を傷つけたりしないように、堂々と胸を張って(背もたれに背をつけて)、我が道を進まなければいけません。リラックスも重要です。自分が危険な存在であるからこそ、何が起きても冷静でテンパらない心を保つ必要があるからです。 運転に大切なのは、この侍っぽいマインド。 私はこの「侍マインド」が全くなかったので、教官から何度も指摘されまくりました。