南海電鉄に暗雲! 泉北ニュータウン「30年間で人口3割減」という現実、近大進出は起死回生となれるのか?
官民挙げてあの手この手の対策
府や堺市、南海電鉄などは魅力ある街に変え、人口減少を食い止めようと懸命の努力を続けている。府は建て替え時期を迎えた建物が増えてきたのを受け、建物の高層化で生まれる空地に地域から求められる施設を整備する方針。大阪都市計画局は 「地域のまちづくりに合う施設を検討したい」 としている。 堺市は若い世代の定住促進に力を入れる。自然に恵まれた泉北ニュータウンの魅力を満載したウェブサイトを開設したほか、11月に入って「まちの参観日」と銘打った定住促進イベントを次々に開催中だ。堺市泉北ニューデザイン推進室は 「若い世代に魅力をアピールし、高齢化に歯止めを掛けたい」 と述べた。 南海電鉄はAI(人工知能)を活用したオンデマンドバスの実証運行を続けている。定員8人のワンボックス車が事前予約を基に最適ルートを判断して運行する仕組み。南海電鉄は 「持続的な運行を模索し、サステナブルな街を目指したい」 と説明した。 槇塚台では、地域コミュニティーに大阪公立大やNPO法人などが協力する「泉北ほっとけないネットワーク」が、府営住宅の空き部屋や戸建ての空き家を改修し、生活支援住宅やグループホームなどへ福祉転用している。 実態を調査した大阪公立大大学院生活科学研究科の加登遼講師らは10月、 「改修が他地区へ広がることで泉北ニュータウンがオールドタウンから変容する可能性が示唆された」 とする論文を国際学術誌「ハビタット・インターナショナル」に寄稿した。
南海電鉄の鉄道事業分社化にも影響
泉北ニュータウンの人口減少は泉北高速鉄道の親会社・南海電鉄の経営と無関係ではない。南海電鉄は2025年4月、泉北高速鉄道を吸収合併し、路線名も南海泉北線に変える。さらに、2026年4月には鉄道部門を分社する。鉄道事業を取り巻く環境の悪化が理由の一つだ。 泉ケ丘駅の1日平均乗降客数は2022年で約3万5000人。南海電鉄グループのなかでは ・難波駅(大阪市中央区、浪速区) ・天下茶屋駅(大阪市西成区) ・新今宮駅(同) に次いで多い。栂・美木多駅は約1万7000人、光明池駅も約2万6000人とそれなりの乗降客がある。 泉北高速鉄道は2024年3月期決算で約47億円の純利益を出すなど、コロナ禍を除いて 「毎年30億円前後の利益」 を出してきた。南海沿線の南大阪や和歌山県は大半の市町村が人口減少にあえいでいる。そんななか、泉北高速鉄道は関西空港(大阪府泉佐野市など)線と並ぶ優良路線だ。 しかし、泉ケ丘駅の乗降客数を1991(平成3)年の約6万9000人と比較すると、ほぼ半減している。泉北ニュータウンの人口減少と高齢化が影響したことは間違いない。この間、南大阪から大阪市中心部、北摂へ向かう人の流れが続いてきた。このまま人口減少が続けば、南海電鉄の鉄道収入がさらに先細りする。 南海電鉄は鉄道分社化の理由として、「事業ごとに迅速な経営判断を下せる体制」の構築を挙げたが、優良路線の将来に陰りが見えるなか、 「鉄道に頼らない成長」 を目指さざるを得ない苦しい胸の内がうかがえる。
高田泰(フリージャーナリスト)