暗くてモノが多い職場をスッキリ 「紹介したくなる工場」を実現した工具メーカー5代目の行動力
清掃活動を自ら率先
田野井さんは父とも相談し、全部署で始業後の20分間を、清掃や整理整頓といった環境整備にあてることに決めました。各部署で環境整備の計画を立てて実行し、管理職と共に毎月点検する仕組みにしたといいます。 「当初、社員たちは『業務時間内の仕事の一環とは言え、なぜこんなに面倒なことをやらないといけないのか』と感じていたと思います。反発して退職した社員もいたほどでした」 そこで田野井さんは、自身が率先して5Sを推進すると決めます。埼玉や宮城の工場、名古屋市と広島市の営業所に出向いて、清掃活動に参加しました。「社員の顔と名前を覚えたかったこともあり、たわいのない話もしながらコミュニケーションをとっていきました」 整理は「いるものといらないものを明確にし、いるものを必要最小限まで絞り込み、残りは捨てる」、整頓は「モノの置き場を『常時』『随時』『一時』で決め、名前や数字をラベリングして管理する」と定義。すると、職場内は徐々に不要なものがなくなり、スッキリしていきました。 それまでは「まとめて購入した方が安いから」と、消しゴムが数十年分もある状態でした。それが、整理整頓の徹底で必要な物をすぐ取り出せるようになったのです。物が減ったことでスペースが生まれ、作業性も向上。何より、社内の雰囲気が明るくなったといいます。
課題だった不良率が改善
さらに、毎月の環境整備点検の評価内容のスコアを集計し、上位のチームに食事券や賞金を贈る制度も作りました。「賞与の評価とも連動させ、チームでも個人でも頑張った人が評価される仕組みにしました」 手順書通りに仕事ができているかなどを確認する「品質整備点検」も定期的に行うようにして、課題だった製品の不良率がパーセンテージで2ポイント改善しました。 5Sが行き届いた工場には、社外からの見学も増えました。営業部のメンバーが、取引先の商社やユーザーに「うちの工場を見に来ませんか」と声をかけたからです。 田野井さんは「お客様に紹介したくなるほどの強みにまで育ったのだと胸が熱くなりました」と話します。 2024年からは、毎月、「工場見学日」を設定して工場見学ツアーの受け入れを始めました。「見てもらうことで、社員たちにもいい刺激になっています」