暗くてモノが多い職場をスッキリ 「紹介したくなる工場」を実現した工具メーカー5代目の行動力
無形資産の5Sも目指して
製品力も営業力も強化した田野井製作所ですが、ドクターセールスは自社製品の売り上げにつながらないこともあるといいます。 「お客様の課題解決のために、競合他社の製品が適していると判断した場合はそちらを薦めます。ドクターセールスでお客様の困りごとの原因が、タップ以外の部品にあることが判明するケースもあります」 現時点は、製品しか売り上げの手段がなく、「お客様の課題解決につながればいい」と田野井さんは話します。 しかし将来的には、ドクターセールス自体で対価を得られないか、模索しているといいます。 「機械や設備の保守点検時の出張調査費のようなイメージを描いています。ただし私たちはまだ、お客様にそれを提案できる状態にはありません。ドクターセールスで蓄積されたノウハウの整理や、社内共有が不十分なのです。無形資産の5Sのような取り組みを進め、形にしていければと思います」
「三方よし」の経営を未来へ
経営において田野井さんが日々持ち続けるのは、「それは三方よしなのか」という問いです。 「副社長に就任したとき、『社員の給与を倍増させたい』と決意しました。まだまだ道半ばですが、利益の3分の1は社員に還元し、残りは将来への投資と、非常時に備えた内部留保にすると決め、それを実行し続けてきました」 「取引においても、私たちだけにメリットがあってもだめだし、取引先だけに利益がもたらされる形態では長く続けられません。三方よしのものづくりと人づくりを誠実に推し進め、未来につながる経営を実現し続けたいです」
ライター・水野さちえ