暗くてモノが多い職場をスッキリ 「紹介したくなる工場」を実現した工具メーカー5代目の行動力
埼玉県白岡市の田野井製作所は、ねじを作る工具の「タップ」と「ダイス」の専業メーカーです。5代目社長の田野井優美さん(48)が入社した2002年当時、自社の工場や倉庫があまりに暗く、雑然としている状態に驚きました。そこで2009年の副社長就任を機に、全部署の清掃活動に参加して社員とコミュニケーションを取りながら、5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を徹底。5Sで成果を上げた社員を表彰する制度を作ったり、営業体制の強化や品質点検の仕組み化も進めたりして、製品不良率や粗利率の改善につなげました。 女性が活躍できる中小企業 時短勤務・教育制度の事例を紹介【写真特集】
ねじ作りの工具でシェア5%
1923年創業の田野井製作所は、ねじを作る工具の製造を手がけています。田野井さんは2013年、父の後を継いで社長になりました。 ねじを入れる穴にねじ山を作る工具が「タップ」で、主に工業製品メーカーに販売しています。ねじとなる金属の棒にねじ山を作る工具が「ダイス」で、こちらはねじメーカーが使用します。 タップとダイスの国内シェアは、工具の総合メーカーが7割弱を占めるなか、田野井製作所も約5%を持っています。専業メーカーとしての高い品質と技術力が、自動車業界を中心に支持された形です。埼玉県と宮城県に工場があり、2024年8月末時点の社員数は132人。年商は約13億5千万円で、コロナ禍前の9割ほどに戻りつつあるといいます。 田野井さんは4人きょうだいの2番目として生まれました。海外にあこがれ、高校卒業後はカナダの語学学校を経て、米ロサンゼルスのビジネススクールで学びました。楽しい留学生活を送っていた1998年ごろ、社長だった父から「大口の取引先が倒産した。留学費用を出せなくなるかもしれない」と電話で告げられます。 「留学が当たり前ではないことに気づかされました。社員やお客様あってこその会社であり、私も留学させてもらっているのだと。幸い留学は継続できましたが、『私も会社の役に立ちたい』と思うようになり、卒業後、家業へ入ることにしました」