ユニクロやGUの服、難民キャンプでリユース シェルバ英子さん「服のチカラ」信じて
企業はどこまで責任を負うのか
一方で、世界的なブランドで製造過程の劣悪な労働環境が「搾取工場」と批判されるなど、企業の責任はより広く求められるようになっていった。ファーストリテイリングでも下請け工場の長時間労働が問題になったり、環境保護や動物愛護団体から製造過程で使う化学物質やウールの原料となる羊の飼育方法について問い合わせがきたりした。その都度、NGOの調査を受け入れたり、製造工場を公表したりして環境改善や透明化に取り組んできた。「会社が大きくなるほど、想定外も増える。大切なのは、逃げずに対話すること」 善意の古着支援も、中にはごみの押しつけのような事例があり、国際的な問題になっている。それぞれの現地ニーズに合わせ、自社で厳しく選別した上で、ときにシェルバさんら社員が難民キャンプに足を運び、確実に届けてきた。これまでに訪ねた難民キャンプは、15カ国以上にのぼる。 アフリカ東部エリトリアからの人々が集まるエチオピアのキャンプは、難民の8割が男性だった。無政府状態の祖国から軍服姿のまま逃れてきた彼らがユニクロのTシャツに着替えると、表情が一気に柔らかくなった。 「人としての尊厳や自信につながる、命を輝かせる力が、服にはある」 現場で感じたことを社内で共有し、回収した服の数やイベントの参加者数など積極的に可視化した。 「具体的に見えるようにすることで、『自分事』として捉える社員が増えていった」 上司として数々のプロジェクトを共にしたグループ執行役員の新田幸弘さん(58)はシェルバさんを「社内で最も知られている人の一人」と表現する。「人が一緒にがんばろうと思うのは、共感や信用、説得力があるとき。彼女には人を引きつける力がある」 いま、シェルバさんのもとには国内外の同僚からサステナビリティに関する相談や問い合わせがひっきりなしに舞い込む。全国の店舗を訪ね、社員集会で壇上に立ち、自分たちの取り組みが何をめざし、どんな意味をもたらすのか、前に出て説明する。 近年、重要性が増しているのは、自立に向けた支援だ。バングラデシュのロヒンギャ難民キャンプでは2022年から、女性たちが有償ボランティアとして縫製技術を学ぶ事業を進め、情報発信に力を入れる。 「服を届けて終わり、じゃない。ビジネスを通じて、社会を変えていきたい」 (年齢・肩書は2023年10月15日時点です)
朝日新聞社