キリン、ネット広告疲れ対策 ビール体験型施設でリアルへ回帰
キリンビールによると、クラフトビールを飲んだことはないが興味を持っている層が国内に約1800万人いるという。井本社長は「五感を通じてクラフトビールを味わい、ブランドの世界観を楽しんでもらいたい」と期待する。 ●アサヒは銀座、サッポロは恵比寿に 体験型施設に力を入れるのはキリンだけではない。アサヒビールは4月、主力製品「スーパードライ」の世界観をイメージした店舗「スーパードライ・イマーシブ・エクスペリエンス」を東京・銀座に9月末までの期間限定でオープンした。 店舗ビル2階にはジェットコースター風の映像アトラクションを用意。製造中のビール缶に乗り、ダイナミックに工場内を移動する映像を幅約11メートルの大型スクリーンに投影する。 アトラクションでビールを飲みたいという気持ちが高まったら、1階のビアバーでスーパードライを飲んだり、自分でビールを注いだりできる。 入場料はアトラクション体験とビール1杯、ポップコーンがセットで税込み700円。平日の昼に訪れても観光客などでにぎわっていた。 サッポロビールも4月、エビスビール発祥の地である東京・恵比寿に醸造設備を備えた体験型施設「エビス・ブルワリー・トウキョウ」を開いた。22年から休館していたエビスビール記念館を改装したものだ。 過去の商品写真などを展示したミュージアムエリアと、醸造設備を見学できるブルワリーエリア、エビスビールが飲めるタップルームエリアに分けられる。 1杯税込み1100円の施設限定エビスビールをはじめ、期間限定品も含めて4~6種ほどのビールを提供する。4月に開いた開業イベントでサッポロビールの野瀬裕之社長は「新しい時代のエビスブランドを展開したい」と語った。 ビール業界は26年10月の酒税法改正に向けて競争が激しさを増している。ビール、発泡酒、新ジャンルのビール系飲料の酒税が一本化され、ビールは実質的な減税となる。消費者の需要開拓に向け、各社が「体験価値」を見直している。
朝香 湧