旧ジャニーズ性加害:新会社STARTOは「鎖国」に逆戻り、紅白出場なしもテレビ局は元通り?
旧ジャニーズと同じ「鎖国状態」に
福田氏は2023年12月に一部の新聞、通信社の記者らの取材に応じたきりで、記者会見は一度も開いていない。 STARTOは24年4月、旧ジャニーズのタレント28組295人と契約し、資本金1000万円で旗揚げされた。経営陣や従業員が出資したと伝えられるが、詳細について説明もない。 このため、芸能界、テレビ界には「資本金と数億円単位になる運転資金は、ジュリー氏が出したか、あるいは債務保証したのではないか」との見方がある。それが本当なら、STARTOは旧ジャニーズの看板を掛け替えただけの組織になってしまう。 このような疑念を晴らすためにも記者会見は不可欠と思われるが、福田氏はその素振りも見せない。旧ジャニーズと同じ「鎖国状態」に戻ってしまった。
被害者への補償は進むも、基準などは不明なまま
一方、ジュリー氏は旧ジャニーズが2023年10月に社名変更したSMILE-UP.(スマイルアップ)の代表取締役を現在も務めている。同社は被害者への補償に専念することになっている。 同社に被害を申告したのは24年12月13日の時点で1008人。そのうち補償内容が合意に達した人が538人、同社側から補償は行わないと通告された人が215人、連絡が取れなくなった人が237人、補償算定や在籍確認中の人が9人だという。補償の基準などは明らかにされていない。 メディアからはより詳細な説明を求める声が上がっているが、ジュリー氏も東山氏も会見する気配がない。記者会見をしたのは世間のバッシングが強かった性加害の認定直後だけだった。 最近では、SMILE-UP.側と一部の被害者、被害申告者との間で調停や裁判に発展したケースや、米ネバダ州ラスベガスでの被害を訴える人たちが同州でSMILE-UP.に対する裁判を起こす動きも表面化している。
紅白出場辞退が象徴するSTARTOの強硬姿勢
新会社STARTOを巡っては、テレビ局に対する強硬な姿勢が旧ジャニーズ時代と似てきたと指摘する声も出始めている。象徴的なのは、大みそかの「NHK紅白歌合戦」への出場をSTARTO勢が辞退した件である。 NHKは2023年9月から旧ジャニーズ所属タレントの新規起用をストップ。同年の紅白は44年ぶりに同事務所からの出場がゼロとなった。24年4月の新会社発足後も起用停止を続けていたが、10月16日にSTARTOのタレントの起用を再開することを発表した。 「被害者への補償と再発防止の取り組みに加え、(SMILE-UP.とSTARTOの)経営の分離も着実に進んでいることが確認できましたから」(10月定例会見で稲葉延雄会長) NHKの制作関係者への筆者の取材によると、その前から紅白の最高責任者である制作統括(プロデューサー)がSTARTOに出演交渉をしていた。しかし、歌手の出場者数で折り合いが付かないでいた。 紅白制作側はSnow Manら2組の出場を提案。STARTO勢は23年9月からNHKに新規出演しておらず、出場基準の一つとして公表されている同局への貢献がないのだから、白組の出場者全21組の約1割というのはとっぴな提案とは思えない。(1997年から2008年までの旧ジャニーズ勢の出場は1~2組だった。) STARTO側は3、4組の出場を望んだ。多く感じられるが、起用が停止される前の22年の出場が6組だったことなどが根拠だろう。 その交渉中の10月20日に放送されたのが、NHKスペシャル(Nスペ) 「ジャニー喜多川“アイドル帝国”の実像」。この番組が両者の話し合いを複雑化させた。 SMILE-UP.の補償担当者が被害者の遺族に冷たい言葉を浴びせる場面が盛り込まれるなど、同社とSTARTOに厳しい内容だった。しかし、STARTOを最も刺激したのはその部分ではなく、旧ジャニーズから横滑りした同社顧問・若泉久朗氏を一方的に糾弾した点だとされている。若泉氏は元NHK理事で制作部門のトップも務めた。