『SAKAMOTO DAYS』杉田智和と島崎信長が語る、役者が人生をかけて積み上げた“芝居の厚み”「あらゆる物事が、芝居に繋がっている」
■特別な1つより、日々の積み重ねが“芝居”に繋がる
――坂本太郎の人生は、仕事とは異なる場所から受けた刺激をもって大きく変化しました。声優という仕事において、外から受けた刺激で変わったことはありますか? 杉田:あらゆる物事が、今の芝居に繋がっていると思っています。芝居について考えるにあたっては、演じる人物の立場や動きを体験するのが一番早いですからね。だから、法に触れること以外は、あらゆる経験を積みたいと思っています。 たとえば、以前“カリスマコンビニ店員”の芝居をする機会があったのですが、僕はそれまでコンビニ店員はおろか接客業を一切やったことがなかったんです。これはもう一度体験した方が良いということで、実際にやらせてもらいました。 ――自主的にですか!? 杉田:当時住んでいたマンションの近所のコンビニに行って「土曜日の深夜帯の1時から3時くらいまで週イチで働けませんか?」と聞いてみたんです。そしたら、店長さんに「そんな最初からシフトを指定してくるバイトはいない(笑)」と呆れられてしまいました。 島崎:それはそう(笑)。 杉田:事情をお話したらバックヤードを見せてくれて、道具の使い方などを教えてもらうことができて、大変参考になりました。実際に見たり、触ったりすることで解像度が大きく上がるので、その刺激を自分から受けにいくのは大事だと思っています。 島崎:体験できるものなら、確かにそうですね。直接体験できないものでも、なにか近い状況がヒントになることもあるし。 杉田:殺し屋は体験できないもんね(笑)。坂本については、むしろ家庭に軸を置いている人物なので、そちらを理解する方が大事だと考えました。今回は実際に家庭を持ってお父さんでもある知り合いから話を聞いたり、関係性の面から近いものを探したりしました。 ――島崎さんはいかがでしょうか。 島崎:杉田さんがおっしゃったとおり、といいますか。大事なのは“1つの特別な体験”ではなくて、日常の中から感情や感覚を拾い上げることなんだと思います。自分の感性だけじゃなくて、街角で酔った人の動きや、友達と楽しそうに話している人の表情も、それぞれから受け取るものがあるんです。もちろん、意識して見に行かないと手に入らないものがあれば、積極的に行動してみます。 役者を何十年続けられるかは分かりませんけど、人生の中で受け取ったものが積み重なっていって、役者としての自分に変化が生まれていくんだと思っています。大きな体験によって変わる部分もあるとは思うけど、長い目で見ると大事なのはそっちなんじゃないかなって。大先輩のみなさんを見ていると、特にそう感じます。 ――積み上げた経験の厚みが芸を作っているのですね。『SAKAMOTO DAYS』でも、そういった厚みを感じたことはありましたか? 島崎:そりゃもう。冒頭ナレーションの大塚芳忠さんなんか、毎回素敵な演技をされていて、毎回しっかりと準備を重ねられている様子が感じられます。どれほどベテランになっても、積み重ねを続けているからこそ、あの厚みがでるんだなと、若輩ながら思っています。 杉田:実際に経験することも大事ですが、すべてを経験することはもちろん不可能です。でも、たくさんの経験を重ね合わせることで、経験したことがないものもイメージできるんですよ。 ――放送を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。 島崎:今頃みなさんは、原作を楽しまれている頃かと思います。アニメも本当に楽しくて、毎週ウキウキしながら現場に行っています。キャラクターの通じ合いやドラマが楽しめるうえに、びっくり箱から面白いものがポンポン飛び出してくる。きっとみなさんにも、ぽかぽかとあったかく楽しんでもらえると思うので、ぜひご覧になってみてください。 杉田:おそらく、放送を待つみなさんは我々よりもより強い期待を抱いていると思います。我々は落ち着いて、そんなみなさんが楽しめるものを作っています。信じて、気負わず、坂本さんのお腹くらい柔らかな気持ちで、アニメを楽しんでみてください。 (取材・文:蒼之スギウラ 写真:吉野庫之介) テレビアニメ『SAKAMOTO DAYS』は、1月11日よりテレ東系列ほか各局で放送開始。Netflixほか各プラットフォームでも配信予定。