湖に優しいルアー、バス釣り「聖地」河口湖町の企業が開発…水中で放置しても水と二酸化炭素に分解
バスフィッシングの「聖地」としても知られる山梨県の河口湖で、湖底にたまったルアー(疑似餌)が問題となっている。釣り糸から切れたものが放置されており、マイクロプラスチックとなって生態系に悪影響を及ぼす懸念がある。こうした被害を防ごうと、富士河口湖町の企業が生分解できるルアーを開発し、テスト販売を始めた。担当者は「環境保全のために全国に普及させたい」と意気込んでいる。(木村誠)
生分解性ルアーの開発は、同町でホテルなどを営む企業「T・S」が中心となり、数年前から取り組んでいた。今年3月には同社が複数の企業などから協力を得て、河口湖畔に「生分解性釣具・生活用品研究所」を設立、ルアーを完成させた。
植物素材などでできた生分解性プラスチックに、もみ殻を混ぜた素材を使用。水中に放置されても5~15年で水と二酸化炭素に分解される。内部に入ったおもりも最終的にはさびて分解する仕組みだ。
研究所では現在も研究が続けられているほか、テスト販売用ルアーの製造が進められている。自身も釣り人という研究員の永徳凌也さん(20)は「釣りは環境を汚しているという悪いイメージがある。釣りができる環境を守るためにも、多くの人に使ってもらえるようにしたい」と力を込める。
禁止のワームも
ルアーなどによる環境汚染は、深刻な問題となっている。
釣り場の環境保全活動を行っている認定NPO法人「日本釣り環境保全連盟」によると、河口湖では2001年から今年までに60回、複数のダイバーが潜水し、手作業でゴミを拾い集める湖底清掃を実施。これまで約3トンのゴミを回収しているというが、目立つのがルアーだ。魚の形をした通常のルアーのほか、河口湖では使用が禁止されている、軟らかいプラスチック製の「ワーム」と呼ばれるルアーも多く見つかっているという。
11月に行った清掃活動では、拾い集めたゴミ約13・5キロのうち、6キロがルアーだったという。
湖などに放置されたルアーは劣化が進むと、大きさ5ミリ以下のマイクロプラスチックとなる可能性がある。湖の魚が食べる恐れのほか、河川を通じて海に流れ出ることも考えられるという。