120年の歴史を誇る「深川硝子工芸」で、技術を磨く職人たち
ー通常のガラス製品との違いは、何かありますか? ほとんど差はないんです。一度ガラス化しているものを溶かすので、砂を原料として作るよりも溶解はしやすいです。 出来上がる製品に関しては、気泡が多く、一つひとつの色合いが微妙に違うのが特徴です。再生ガラスは不純物が混じるため、そのような特徴が生じるのです。 ー自社・OEM問わず、商品のデザインはどのように決められているのでしょうか。 自社商品は、自分たちで図面を引いてデザインを決めます。OEM商品は、お客さんから図面をいただいて製作していますね。 当社は、摺り合せや穴あけのほか、名入れやロゴ入れをするサンドブラストや模様をつける切子なども行えます。デザイン・ガラス生地製作・加工までを自社設備内ですべて対応できる点は、当社の強みです。
手作りのガラス産業をつないでいきたい
ー出口さんが考えるガラス製造に関する課題は、何かありますか。 課題は、やはり人手に関することですね。最近は、「ガラス作りがしたい」「興味がある」という美術大学を卒業した人も入ってきてくれてはいますが、職人はつらい仕事ですし、そういう人たちが長く働ける環境作りをしていかないといけないなと思っています。 今いる60代以上の職人が若かった頃は、ご飯を食べるためにがむしゃらに働かれていました。一方で、今の20~30代の職人は、ガラスが好きだからやっているという印象が強いです。 世代によって、仕事に対するモチベーションやスタンスが異なるんです。そういった職人の世代間のギャップを埋めるのは、なかなか難しいですね。そこを取り持つことは、事業の存続に大きく関わることであり、私の役目だと考えています。
ー最後に、深川硝子工芸の今後の展望を教えてください。 まずは、会社を絶対に潰さないこと。手作りのガラス産業自体が自分の代で終わらないようにしたいです。 当社は120年近くガラスの製造をやっていますが、同業者は半分以上なくなっているそうです。このままだと産業自体がなくなってしまう。私としては、深川で出口家に生まれ、小樽に移住したということを意識して取り組んでいくつもりです。 私は6代目なのですが、ゆくゆくは誰かにバトンを渡して、伝統をつないでいければいいなと考えています。 また、今後はヨーロッパに向けた発信をしたいですね。ガラスの本場はヨーロッパなので、毎年足を運んでいるんです。日本でガラスが実用化されるようになってからはまだ150~200年ほど。ヨーロッパに比べると、まだまだ歴史が浅いんですよ。 歴史は浅いですが、ガラスは伝統工芸品の中でも自由度が高いのが魅力。最近は「SNSを見て、ボーナスで買いに来ました」と言ってくれる20~30代の方も多くて。時代が変わってきていて、本当に面白いなと思っています。興味を持たれた方は、ぜひ一度お手に取って見ていただけるとうれしいです。