『THE FIRST TAKE』で心に響いたMCは?熱さあり、涙ありの人気曲を厳選
2024年11月15日、チャンネル開設5周年を迎えた『THE FIRST TAKE』。“一発撮りのパフォーマンスを鮮明に切り取る”という信念のもと、ここでしか観ることのできない渾身のパフォーマンスが数多く誕生したが、そのなかでも“心に響いたMC”をテーマに5曲を厳選。どういう想いをもってマイクの前に立つのか。アーティストのまっすぐな言葉にこもった、熱い想いを感じてほしい。 動画:アーティストのまっすぐな言葉だからこそぐっとくる!『THE FIRST TAKE』パフォーマンスの様子 ■サンボマスター - できっこないを やらなくちゃ / THE FIRST TAKE 「全員優勝! 全員優勝!」と山口隆(唄とギター)が煽り、ライブさながらのMCで始まったサンボマスター。“一発撮り”と言っても、レコーディングスタジオのような静寂と緊張感に息を呑む一発撮りもあれば、ライブハウスのような臨場感や迫力が胸に迫る一発撮りもあって、彼らは明らかに後者である。 「サンボマスターです! よろしくお願いします!!」と山口が叫び、近藤洋一(ベースとコーラス)、木内泰史(ドラムスとコーラス)とともにドガジャーン! と3人が音を鳴らした瞬間、どこで演奏しようが、“君”がどこで聴こうが、ここはライブハウスとなる。 「俺は君とね、優勝しに来たのよ。悲しいことがあった時、あんたがここに来る、ボリュームを上げる、俺たちがいる。優勝しに来たんだ。ひとりぼっちにさせねぇんだ」と、山口は一人ひとりの “君”へ語りかけ、「ここに来た全員が優勝するんですよ!」と力強く宣言。どんなにつらいことがあっても懸命に人生を踏ん張る“君”をロックンロールで鼓舞し続けるサンボ。“君”がまた一歩踏み出せたなら、悲しみに打ち勝てたなら…彼らはそれを“優勝”と呼ぶのだろう。 ----- ■長渕剛 - とんぼ / THE FIRST TAKE 「長渕剛です。『THE FIRST TAKE』ついに登場…“ついに”って自分でいうわけ」と冗談交じりの挨拶から和やかな雰囲気から始まった長渕剛のパフォーマンス。 「僕は田舎から東京に出てきたクチだったから。バカにされるのがいちばん嫌でさ」45年という自身の音楽人生を振り返り、「バカはバカなりに、バカにされないように。そうやって歌を書いてきた」と彼の愚直で一本気のある人柄を表すような言葉が続き、歌への想いを語る冒頭MCは6分という熱の入りようだ。 「生きるために歌をうたってきたから」の後、呼吸を整えて言い放ったのは「僕の歌はね、強い男の歌じゃないんですよ。まぎれもなく弱虫の歌です」だった。「俺はダメだ。俺は生きていけない」と弱い自分と対峙しながら書いた曲であることを明かし、そんな弱虫の歌をみんなが聴いて一緒に歌ってくれること、国境も超えて自分の歌として輝いていることの幸せを噛みしめる。 「僕が世に放った歌が、みんなの心のなかに、自分の歌として、燦々とそこにあるんだったらこんな幸せなことはねえな…はぁー苦しんで良かった、そういうふうに思ったりもする」 熱心なファンだけでなく、彼の音楽に触れる機会の無かった世代にも歌が届くように、しっかりと言葉で想いを伝えて。一言一句に気持ちを込めて歌う「とんぼ」は、やけに骨身に染みる。 ----- ■ASIAN KUNG-FU GENERATION - ソラニン / THE FIRST TAKE 『THE FIRST TAKE』出演時、バンド結成25周年を迎えていたASIAN KUNG-FU GENERATION。 「ここで何を話そうか?」と、出演前夜から悩んでいたという後藤正文(Vo、Gt)が、「25周年のことを結構考えた」と話しはじめ、「25年音楽をやってきた感じが今日、演奏で出せたらいいなと思った」と自然体で意気込みを語った冒頭MC。 続けて、「俺たちにとって、何がこの先成功で、何がこれまで成功だったか? ってことを考えた」と25年の歩みを振り返りながら、「25年もさ、一緒に音楽を続ける仲間がさ、時々ムカついたり、ケンカしたりするけど、見つかったっていうのがさ。それでもう半分以上成功だよね、みたいな気持ちになってね」と、照れくさそうな表情を浮かべながらも想いをしっかりと語った後藤。 微笑みながら話を聞く喜多建介(Gt、Vo)、噛みしめるように深い頷きを見せる伊地知潔(Dr)、まっすぐ前を見つめ話に聞き入る山田貴洋(Ba、Vo)の表情も注目したいポイントのひとつだ。 「そんな感じで演奏できたら。普段あんまり言わないけど、良いなって思うよ」という優しい語りかけから始まった「ソラニン」は、いつも以上に4人の強い結束力を感じさせるものであった。 ----- ■LiSA - 炎 / THE FIRST TAKE 表情豊かな圧倒的歌声で「炎」を歌唱した後、ひと息ついて、瞳から零れそうな涙を隠すように小さく笑うLiSA。「なんか…いろんなことを思い出しました」と、複雑な表情を見せる。 「この『炎』という曲は、いろんなことを乗り越えて。どんな辛くても生きていかなくちゃいけないんだという、今までのいろんな自分の中の想いが…」と、気持ちを整理しながらひと言ひと言、「炎」への想いを丁寧に紡いでいく。 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』主題歌として作品に寄り添った大切な一曲であり、そしてLiSA自身がこれまで歩んできた音楽人生にも重なるメッセージが詰まった歌だからこそ、思わず感情が溢れたのだろう。感情の高ぶりが伝播し、聴く者の心にガツンと響く。 「なんか途中で、『落ち着かなきゃ! 落ち着かなきゃ!』と思いながら、すごくライブのような気持ちで(歌えて)。息も、想いも、このなか(「炎」)に入っていった気がしました」と歌唱中の心境を赤裸々に語ったのは、『THE FIRST TAKE』という特殊な空間ならではの出来事だったのかもしれない。 最後に「はぁ」とひと息ついたLiSAは、「この白い空間、ズルいと思う!」と普段のチャーミングな姿へと戻っており、そんなキュートな表情も見どころである。 ----- ■キマグレン - LIFE / THE FIRST TAKE クレイ勇輝(Vo)の「どうもっ」の後にISEKI(Vo、Gu)と目を合わせながら「キマグレンです」と語り始める。 再結成を果たしたキマグレンの第二章のスタートとなるメディア初パフォーマンスがこの『THE FIRST TAKE』初登場なのだが、「僕的な想いも含めて、曲にいく前になんか話できたらなと思っていて」と再結成の経緯を語り始めたクレイ。 夢を持って始めたはずの音楽だったのに、ああしたい、こうしたいという自分のやりがいよりも“こうしなくちゃいけない”を気にしすぎてどんどん嫌になってしまい、音楽から離れたという解散時の話や2023年に亡くした母親が「キマグレンを聴きたい」と願っていたことを機にISEKIと話し、周りからの声もあって、またやりたいと思えたという再結成時の話。 音楽と少し距離を置いたからこそ見えたこと、いまだから話せる素直な気持ちを真正直な言葉で伝えるクレイと、その言葉を大きな心で受け止めるISEKI。「そんな想いを込めて曲にいけたらなと思います」というクレイに、「この一曲に全部込めていきましょう。僕らの今までの人生」とISEKI。 様々な想いをひっくるめて再始動するキマグレンの「さあ、始めましょう」という重みのあるひと言からの「LIFE」は生命力に溢れ、希望に満ちていた。 ----- ■音楽同様、大切にしたい言葉たち 『THE FIRST TAKE』の幾多あるパフォーマンスの中から“心に響いたMC”にスポットを当ててわかったことは、一発撮りかつ限られた時間のなか、アーティストが楽曲同様にMCや言葉を大事にしているということ。 初めての人にも自身の存在を伝えるため、楽曲をより深く理解してもらうため、アーティストは短い時間の中で最善の言葉を選び届ける。 そんなMCの意味や重要性、楽曲に与える効果に注目しながら『THE FIRST TAKE』を観てみると、アーティストや楽曲の違った魅力が見えてくるかも知れない。 TEXT BY フジジュン
THE FIRST TIMES編集部