私大の半数超「定員割れ」、大学が突然破綻した後の学生の行方 淘汰時代へ「早期是正と学生保護」の必要性
学生保護機構などセーフティネットも
次に事後措置だが、大学が経営破綻した際の学生保護の枠組みについては、とくに確立されたものがある訳ではない。そこで、破綻大学に在籍する学生の教育機会を確保し、学業継続を支援するためのセーフティネット機能を担う機関、例えば第三者機関としての「学生保護機構」の設置が必要だ。 同機構の主な役割は、破綻大学の学生保護(取得単位の保護・移管、他大学への転学支援、納付した授業料の保護・返還、学籍簿の管理、学業継続のための資金援助など)、救済大学の斡旋・資金援助、円滑な破綻処理手続きへの支援などが考えられる。なお、救済大学の斡旋に当たっては、「地域連携プラットフォーム」や「大学等連携推進法人」の枠組みも活用し、国公私の枠を超えた複数大学がグループとして受け入れるという選択肢もあろう。 その際、学生を受け入れた大学側では、授業料の差異に加え、一時的に定員超過となるケースも想定されるが、破綻大学が受けていた補助金等を分割支給するなどの特例も必要ではないだろうか。 同機構の運営に当たっては、会員大学(学校法人)からの資金拠出に加え、拠出金だけでは不足する場合、金融機関からの借り入れや国からの財政措置(公的資金)も備えておく必要がある。 現実となってほしくはないが、この課題に備えるために、大学側の早期の対応と、国として事が起きる前に経営が危ぶまれる私立大学等への具体的な「早期是正措置」のあり方、「学生保護機構」の役割や体制等に関する制度設計が急がれる。 このような環境整備は高等教育システム全体の信頼性と安定性の向上にも寄与し、結果として社会全体の利益にもつながるものと考える。ここで提案した制度設計は、法制面を含めまだ多くの課題もあろうが、学生保護の枠組み構築に向けた検討のきっかけになることを期待したい。 (注記のない写真:Graphs / PIXTA)
執筆:第一生命経済研究所 総合調査部 研究理事 谷口智明・東洋経済education × ICT編集部