私大の半数超「定員割れ」、大学が突然破綻した後の学生の行方 淘汰時代へ「早期是正と学生保護」の必要性
大学が経営破綻したら、学生はどうなるのか
日本の大学生の約7割は私立大学に在籍している。私立大学は国公立大学とともに高等教育の根幹を担う存在であり、高い公共的使命が求められる。大学が経営破綻し突然閉鎖されれば、在学生の教育機会が失われ、卒業が困難になる可能性もある。 過去に在学生の卒業を待たず閉鎖された私立大学のケースでは、文科省が各大学団体に協力を求めつつ、近隣の大学などで学生を受け入れたが、将来的に大学破綻が増えれば個別対応にも限界があろう。行き場のない学生の教育機会の確保等を巡り深刻な社会問題となりかねない。 一般的に、大学と学生の間には、学生側が授業料などを支払う一方で、大学が授業等の教育役務を提供する「在学契約」が継続していると考えられる。破綻を理由にした他大学への編入などは容易ではなく、契約者としての学生を保護する観点が重要だ。そこで、私立大学(学校法人)が経営破綻した際、学生の教育機会を確保し、安心して学業を続けられるようあらかじめセーフティネットを構築する必要があるのではないか。
大学の経営指標と「早期是正措置」の必要性
通常、経営破綻は突然発生するものではなく、経営悪化に陥っている組織を経営改善あるいは早期に退出させるといった事前措置のほうが、経営破綻後の措置よりも契約者や取引先、債権者の負担といった社会的コストが小さく済む。 大学に置き換えると、経営改善の見込めない大学について計画的に規模の縮小や統合・撤退などがなされるように、所轄庁が経営指標に基づいて指導・命令を発動する。それでも経営困難となり破綻した場合に備え、事後措置として「学生保護機構」(仮称)を活用するといった両面から備えておく必要がある。 まず事前措置については、大学を設置認可してきた国が経営の持続可能性に課題を抱える大学や学部に是正命令を発動し、早期に再生・再建に向けた措置を講じなければならない。例えば、国は経営判断を各学校法人の自主性に任せるだけでなく、私学事業団の「経営判断指標」といった経営指標等を参考に、経営の継続性や健全性を客観的に把握する観点から「早期健全化指標」を設定する。 そのうえで、経営判断指標に基づいた「早期是正措置」を導入することで、突然の経営破綻を回避し、経営を早期に改善させる必要がある。こうした取り組みを迅速かつ効果的に行うためには、国が必要な是正命令を発動するなど「早期是正措置」に法的拘束力を持たせることも検討すべきだ。 あわせて、学校法人会計の透明性向上も不可欠である。各学校法人は、受験生も含めた学生や保護者など社会に対して判断材料を明示する必要があり、財務状況等をわかりやすく公開しなければならない。国による指導内容や大学の経営改善に向けた計画などを広く公開し、より透明性のある情報開示を行うことが求められる。