週刊・新聞レビュー(12・9)「衆院選 かしこく投票 『戦略的投票』がお薦め」徳山喜雄(新聞記者)
死票が多いのが小選挙区制の特徴
報道各社の衆院選の情勢調査は、いずれも自民党の一人勝ちと予測している。 毎日新聞の中盤情勢は「自民は……公明党と合わせて衆院の3分の2(317議席)を超えるだけでなく、自民単独での3分の2超えも視野に入る」(8日朝刊)とし、産経新聞とFNNが合同で調査した終盤情勢は「衆院の3分の2に当たる317議席をうかがう勢い」(9日朝刊)とした。 この結果をみて、しらけて投票に行く気もしなくなった、という人もいるのではないか。 支持する政党も候補もいない。こんなとき、棄権するしか道はないのか、それとも何かできることはあるのか。毎日12月3日夕刊の『戦略的投票』のススメ」という記事が参考になった。 ゲーム理論に詳しい早稲田大の船木由喜彦教授は、もっとも支持する候補者に1票を投じることを「真実表明」と呼び、それ以外の投票方法を「戦略的投票」とする。 「小選挙区で、AとBの候補者がいて自分はどちらも支持していない。棄権をしたくなるが、こうした場合でも、どちらがより嫌いかを考える。最も嫌なのがAなら、Aを倒すためにBを入れる」 「A、B、Cの候補者がいて、自分はAの候補者を支持しているけれどもとても当選しそうにないという場合。BとCを比較してよりAに近い考え方を持つBに投票する」 これらが戦略的投票の典型的なもので、投票先に悩む人たちに薦めている。 朝日12月7日朝刊のコラム「日曜に想う」は、政治学者でもある蒲島郁夫熊本県知事による蒲島理論を紹介した。 「選挙のたびに投票行動を変える人たちを『バッファープレイヤー(緩衝材の役割を果たす有権者)』と呼ぶ。彼らは与野党伯仲志向が強い。自民党政権が危機だと感じると自民党に集まるが、そうでない時は伯仲にしておいて、自民党が国民の意識に鈍感になることを防ぎたいと考えている」 落選者に投じられる死票が多いのが小選挙区制の特徴だ。今回が同制度でおこなわれる7度目の衆院選となる。