週刊・新聞レビュー(12・9)「衆院選 かしこく投票 『戦略的投票』がお薦め」徳山喜雄(新聞記者)
投票率は影響するのか、しないのか
前回2012年の衆院選の投票率は過去最低の59.32%だった。今回はそれを下回り50%台の前半になるという見方もある。 それでは、投票率は選挙結果に影響を与えるのだろうか。 投票率が下がれば、組織票をもつ自民党が有利になるといわれることもある。しかし、東京新聞の11月25日夕刊はこれまでの「師走選挙」を振り返り、「投票率に大きな影響はみられず、自民党が議席を減らしたケースが多かった」と分析している。 戦後、12月におこなわれた衆院選は5回。このうち自民党が議席を増やしたのは、1969年(自民党の佐藤栄作政権)と2012年(民主党の野田佳彦政権)で、それぞれ投票率は68.51%と59.32%で前回と比べ高くない。とくに12年選挙は過去最低の投票率だった。 なるほどと思いながら上記の記事を読んだ。だが、同じ東京新聞の12月6日朝刊は「投票率次第で激変も」と投票率が選挙結果に影響を与えると、違った見解を載せていた。 「日本の有権者はほぼ1億人。投票率1%は100万票だ。それが295の小選挙区に分かれている。単純に計算すると、一選挙区当たり約三十数万票。投票に行くかどうか迷っている有権者が動き、投票率を1%押し上げれば、それだけでも各地の選挙区で結果が変わる可能性がある」 影響するのか、しないのか、どちらを信じればいいのだろうか。 THE PAGE(12月7日)は東京大の菅原琢准教授による寄稿「投票率は選挙結果を左右しない」を掲載。「投票率が選挙結果を決めるというような議論、考え方は適切でない」「棄権者が投票に行けば自分の党に入れるはずというのは、責任逃れのための誇大妄想でしかない」と明快に述べている。 その理由として「たとえば投票率が高かった2005年の郵政解散では自民党が圧勝しているが、やはり投票率が高かった2009年には自民党は惨敗している」とする。 衆院選は12月14日が投開票日。かしこく投票したいものだ。(2014年12月9日) ※この批評は東京本社発行の最終版をもとにしています。 ------------------ 徳山喜雄(とくやま・よしお) 新聞記者。近著に『安倍官邸と報道―「二極化する報道」の危機』(集英社新書)。