南半球の悲劇 英国と豪州が生んだ大型FRセダン「レイランドP76」の奇妙な物語
P76フォースセブン
P76の早すぎる終焉により、実現するはずだった派生モデルも闇に葬り去さられた。その中には、P76フォースセブン(写真)と呼ばれる興味深いクーペモデルもある。イタリア、米国、英国のデザインテーマを融合させたもので、10台が現存していると考えられている。
現在
今日、P76はオーストラリアでカルト的な人気を誇り、ニューサウスウェールズ州シドニー西部郊外では活発なオーナーズクラブが毎月会合を開いている。P76は、2013年の北京からパリまでのラリーのクラシックカー部門で優勝し、1965年式のポルシェ911を打ち負かした(写真)。P76は2023年に50回目の誕生日を迎え、オーナーズクラブがラリーを開催した。写真を見る限り、大いに盛り上がったようだ。
失われた勝利
オーストラリアが自動車生産国であった時代は終わった。輸出は割高で輸入品は割安となるような為替事情から、GM、フォード、トヨタはいずれも国内の工場を閉鎖した。 P76プロジェクトの失敗は、多国籍企業として主要なプレーヤーであり続けようとしたBLの試みにおける最後の悲劇であった。このクルマは、BLが見た「英国のゼネラルモーターズ」という夢の中に散らばる、1つの小さなかけらである。
リチャード・ブレンナー(執筆) 林汰久也(翻訳)