日韓すれ違う主張 輸出管理の厳格化問題を考える
「バランス」欠けば対立エスカレート
一般論として、輸出入管理の実態は複雑で、白黒が割り切れない場合が少なくありません。日本側にも北朝鮮への禁制品の輸出に関して問題になる事案がないといえるか、疑問の余地があります。たとえば北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長のドイツ製高級車は韓国のみならず、日本も経由したといわれています。 こうしたことを勘案すれば、日本政府が今回取った措置は、日本の法律に従ったものであっても、韓国側の対応によって起きた問題の度合いと比べると、バランスが取れているか疑問といわざるを得ません。バランスを欠いた行為を取ってはならないことは外交の常識です。お互いに過剰反応すれば対立は激化する一方になり、関係修復がますます難しくなるからです。 そのような考えから、今回の措置はできるだけ早期に撤廃するのがよいと思います。韓国側の輸出入管理に問題があれば是正を求めるのは当然です。まずは韓国と協議し、どうしても埒(らち)が明かない場合には強い措置を取ることも必要になるでしょうが、韓国側の言い分も聞かないで一方的措置を取ることは得策ではありません。 来週のWTO一般理事会の場で各国の意見を聴取した上で、日本の措置を必要に応じ修正することも一案だと考えます。
------------------------------------- ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスタン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹