働きたくても働けない40~50代前半が「完全に見捨てられている」雇用の打開策は?「1回、お試しでもいいから働かせて」
人手不足、物価高が叫ばれる中、官民共に急がれているのが給与アップなどの待遇改善だ。“初任給”を引き上げる動きは加速していて、2024年度は75.6%の民間企業で引き上げが行われ(「産労総合研究所」調査)、2025年度も自衛官で約4万円、国家公務員(大卒総合職)で約3万円の初任給アップが予定されている。若手の待遇改善が進む一方で、バブル崩壊後に就活に挑んだ40代~50代前半の就職氷河期、いわゆる“ロスジェネ世代”では、今も非正規雇用や低賃金など、不安定な雇用状態でいる人が多いと言われている。 こんなにたくさんいる苦しい“ロスジェネ世代”(人口ピラミッド) ロスト・ジェネレーション=忘れられた世代とまで言われるが、この世代は本来であれば職場で活躍する働き盛りのはず。しかし、正社員になれず、また45歳以上ともなれば職業訓練給付金の対象からも外れるという中、嘆きの声も多い。どうすればこの世代を救えるのか。『ABEMA Prime』では現状と今後の打開策を、日々相談を受ける専門家とともに考えた。
■40代~50代前半“ロスジェネ世代”の現状は
若者への待遇が手厚くなる中で、氷河期世代への待遇改善が滞っている状況について、氷河期世代ユニオン代表の小島鐵也氏は「若い人たちは人口が少なく、今は売り手市場だから給料が上がるのは市場原理として仕方ない。しかし、40代、50代前半の氷河期世代が置き去りにされている感は否めない」と述べた。 氷河期世代ユニオンには、さまざまな相談が寄せられている。「非正規で長く働いて、なかなか就職ができないといった相談や、難関資格を目指しているが合格できず、無職期間が伸びて、普通に採用されることも難しくなるという相談が多い」とのことだ。2ちゃんねる創設者のひろゆき氏も「20代なら若いので、スキルがなくてもとりあえず採用される。氷河期世代はスキルがない、身体もそんなに元気なわけではないとすると、やはり採用されない。失業保険で職務訓練校に行ってスキルを得ても、実働でやったことがないのを『座学でなんかやったぐらいで正社員になれるわけないだろう』みたいなところがある」と指摘した。 さらに小島氏も「年齢と実務経験ではねられてしまう。職業訓練で努力しても採用には至らない。できれば1回、お試しでいいので実際のその職場で働いてもらって、実践的なスキルを身につけることをやれば、もう少し違う結果になる。とにかく本採用は難しくても、お試しで少しの間使うことをやっていただければ。年齢や実務経験を見て、書類ではねられることが多いので、面接まで辿りつかない。偏見をなくしてほしい。非正規をずっと長くやっていた方でも、スキルがある方は結構いる。そういう方をぜひ企業の方には発掘してほしい」と述べた。 氷河期世代の“相対的剥奪感”について、社会学者で甲南大学教授の阿部真大氏は「上の世代との差がすごく大きい。上のバブル世代が就職して、結婚して、マイホームを持って、というのを小学校、中学校、高校まで思ってきたのに、突然将来が奪われた感覚がすごく強い」と解説。 また、前参議院議員・音喜多駿氏は「氷河期世代の方々にチャンスが少なかったと言うのは極めて大きな問題だ。僕的な考え方でいうと、解決策が雇用の流動化しかない。みんな正社員にしてあげたいが、企業の体力は有限。日本は1回正社員にしたらなかなか解雇はできないし、終身雇用で最後まで雇い続ける。そうなったら下の世代に椅子が回ってこない。労働市場を流動化してチャンスを平等に与えるという仕組みを作っていく必要がある」と述べつつ、これまでの政策について「改革が片方で終わっていた。派遣法を拡大していく一方で、正社員の労働組合が一生懸命『労働者の権利を守れ』ということで正規・非正規の垣根を崩せず、非正規雇用の枠だけが増えてしまった。改革をもっとパッケージでやるべきだ」と語った。