心臓の健康を見守るApple Watchの心房細動履歴、専門医に「正しい使用方法」を聞いた
なお、心房細動履歴は医師から心房細動と診断された人の利用を想定した機能です。対象となる人の心拍は不規則であることが前提なので、心房細動履歴をオンにすると代わりにApple Watchの「不規則な心拍の通知」機能がオフになります。 そのため、心房細動の診断を受けていない人は心房細動履歴を使うべきではありません。Apple Watchで「不規則な心拍の通知」を受けた場合に、医師による正しい診断を受けてから、心房細動履歴を効果的に使う方法を検討するとよいでしょう。
■Apple Watchで心臓の健康に気を配る人が増えている 桑原先生が院長を務める東京ハートリズムクリニックでは、2016年の開業当初から、不整脈を抱える患者がみずから携帯型心電計を使って記録した心電図のデータを、クリニックホームページ上の専用窓口を通して送付し、不整脈専門医が確認後、診断名を返答するサービスを提供しています。 2021年、Apple Watchの心電図アプリが日本でも使えるようになってから(関連記事:「Apple Watch、心電図アプリや不規則な心拍の通知機能を日本で解禁」)、東京ハートリズムクリニックでは、Apple Watchで記録した心電図データも診断して返答するようにサービスを拡大しました。 桑原先生によると、現在では携帯型心電計よりもApple Watchで計測したデータを送ってくる患者の方が多いそうです。
Apple Watchの計測データから、心房細動の兆候が正確に読み取れるものなのでしょうか。桑原先生は「データの精度はきわめて高い」と太鼓判を押します。 「当院に通院歴のない患者にも心電図の解析サービスを無料で提供する理由は、不整脈で悩まれている人に正しい診断を伝え、必要であればできるだけ早期に治療を受けてもらい、不整脈による不幸な転機に至らないようにしてもらいたいからです。不整脈を自覚して心電図を記録したけれど、それが問題のないものかどうかよく分からず、悩まれている方はどうぞお気軽に利用してください」 ■Apple Watchは不整脈の治療に革命をもたらした 桑原先生は、Apple Watchが「不整脈の治療に革命をもたらしたデジタルデバイス」であると語ります。 心房細動のカテーテルアブレーションを受けたあと、正常の脈拍を数年間維持していた人が、Apple Watchから「不規則な心拍の通知」を受けたことで速やかに再発を知り、桑原先生のもとを訪れて適切な処置を講じることができたことがあったそうです。 「心房細動は、患者自身に自覚症状がないケースが約4割あります。その患者も、心房細動が再発しても自覚症状がまったくなく、もしApple Watchによる通知がなかったら診断が遅れて、脳梗塞や心不全を引き起こしていたかもしれません。Apple Watchがユーザーの命を救ったのです。“革命”という表現は大げさではないと私は思っています」 携帯型心電計が心房細動の兆候を確認できるのは、患者がデバイスを胸に当てて計測を行う約30秒間に限られます。携帯型心電計は筐体もそれなりに大きいため、常時持ち歩くのは少々負担です。また、眠っている間は計測ができません。