トランプ返り咲きに影落とす“危険思想”政策レポート「Project 2025」、その内容とは
ハリス陣営は“トランプの恐怖”のあおりへ
「Project 2025」がトランプ陣営にとって、当初の予想以上に困惑材料になりつつある一方、ハリス陣営は、9月に入り、これを追い風にしたキャンペーンに乗り出し始めた。 去る2日からは、フロリダ州など重要州有権者向けに、トランプ候補と「Project 2025」を関係づけた選挙広告をTVやインターネットを利用して流し始めており、その中で「トランプ再登場で米国民が大切にしてきたあらゆる価値観が蹂躙される」「『Project 2025』はトランプが独裁者になるための青写真」などと訴えている。 民主党全国委員会(DNC)もこれに同調し、全米各地の公園や空き地に「トランプ就任1日目に独裁者に! 『Project 2025』をグーグル検索しよう」と大書きした選挙看板を立てかける特別作戦に乗り出した。 これまでのところ、こうした民主党陣営の一連の“トランプの恐怖”をあおるキャンペーンは徐々に有権者の心に響きつつあるようだ。 CNNテレビがペンシルバニア、ウィスコンシン、ミシガンなど勝敗のカギとなる接戦州6州を対象に行った最新世論調査結果によると、いずれの州においても、過半数に近い有権者がトランプ氏返り咲きに恐怖感を抱き、結果的に同氏を敬遠していることが明確になった。 このCNN調査では、「トランプ候補の考えは極端で国民の脅威と思うか」との質問に対し、ウィスコンシン(51%), ミシガン(49%)、ジョージア(48%)、ペンシルベニア(48%)、ネバダ(47%)、アリゾナ(46%)と、接戦州6州すべてにおいて、多数が「そう思う」と回答している。 同調査結果を踏まえ、ワシントン・ポスト紙のベテラン・コラムニスト、アーロン・ブレーク氏は早速「”恐怖要因“(fear factor)がトランプ候補にダメージを与えている」として、次のように論じている: 「今回の大統領選挙ではある意味、どちらの候補が国にとってより大きなダメージとなるかが争点となる中で、CNN調査結果は、ここ数週間の選挙戦通じ、ハリス陣営にとってまたとない好材料となっている。調査対象6州すべてにおいて、選挙登録を済ませた有権者のうち平均で54%が『トランプは主義主張が極端すぎる』、48%が『国にとっての脅威』と回答する一方、ハリス候補については大多数が『全般的に主流の存在』と受け止めている……こうした結果は今後、ハリス陣営にとって、有権者を投票所に向かわせる有効な動機付けとなるだろう」 トランプ氏が今年の大統領選に勝利するためには、今後、残された60日足らずの選挙戦を通じ、有権者の間に根付きつつあるこうした恐怖感をいかに払拭できるかが重要なカギとなりそうだ。
斎藤 彰