相続人の1人だけが“遺産分け”に納得せず大揉め→「遺産分割調停」へ…弁護士に依頼した場合、費用は誰が負担する?
相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停へと移行して解決を図ることになります。では、遺産分割調停への対応を弁護士に依頼する場合、どの程度の費用を要するのでしょうか? また、遺産分割調停にかかる弁護士費用は、誰が負担するのでしょうか? 本記事では、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が、遺産分割調停を弁護士へ依頼したケースについて解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
「遺産分割調停」とは?
遺産分割調停とは、家庭裁判所で行う遺産分けの話し合いです。はじめに、遺産分割調停の基本について解説します。 相続人の1人「遺産分割協議に納得できない」→遺産分割調停へ 人が亡くなると同時に相続が発生します。 相続が発生すると、亡くなった人(「被相続人」といいます)が有していた財産は、遺言書などがない限り、当然に分割される遺産(貸していたお金の返還請求権や、ローンのような金銭債務など)を除き、一時的に相続人全員での共有となります。 しかし、共有状態のままでは使い勝手がよくないうえ、原則として遺産である預貯金の解約や有価証券の移管などができません。そこで、相続人全員で遺産をわけるための話し合いをすることになります。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。 遺産分割協議が無事にまとまると、合意できた遺産のわけ方を記した「遺産分割協議書」を作成し、これを使って遺産の名義変更や解約などの手続きを行います。 しかし、遺産分割協議の成立には相続人全員による合意が必要であり、1人でも協議に納得しない相続人がいれば遺産分割協議を成立させることはできません。そこで、当事者間での遺産分割協議がまとまらない場合は遺産分割調停を申し立て、遺産分割を目指します。 遺産分割調停の概要 遺産分割調停は家庭裁判所で行う手続きであるものの、あくまでも話し合いの手続きであり、成立に至るためには相続人全員による合意が必要です。とはいえ、当事者が直接顔を合わせて対峙するわけではありません。遺産分割調停は、裁判所の調停委員が当事者から交互に意見を聞く形で進行します。 また、調停では待合室も申立人と相手方とでわかれており、原則として両者が顔を合わせることがないように配慮されています。 遺産分割調停にかかる期間 遺産分割調停が1回の期日だけで終わることは稀であり、終結までに4回から8回程度の期日が開かれるのが一般的です。期日から期日までの間は1ヵ月から1ヵ月半程度が空くため、遺産分割調停の申立てから終結までには、おおむね半年から1年程度の期間を要します。