「まるでギャンブル」の衆参ダブル選挙案…いまの自民党・石破政権に広がる“意外な空気感”
■「内閣不信任案が可決されたら解散」 石破茂首相が2024年末、唐突に衆院解散戦略を語り始めた。12月27日に行われた読売新聞のインタビューと都内で開かれた内外情勢調査会の講演の中で、年明けの通常国会で25年度予算案や重要法案が否決されたり、内閣不信任決議案が可決されたりした場合、衆院解散・総選挙に踏み切る考えを表明した。 【写真】年頭記者会見で記者の質問に答える石破首相 そのうえで、翌28日の読売テレビの番組では、7月26日投票の参院選に合わせた衆参同日選に踏み切る可能性を問われ、「これはある。参院選と衆院選を同時にやってはいけないという決まりはない」と踏み込んでいる。 24年10月の衆院選で与党の自民、公明両党が大敗したばかりで、12月の読売新聞世論調査(13~15日)では、石破内閣の支持率は39%と前月比4ポイント下落し、不支持率が48%と4ポイント増えたにもかかわらず、政局の主導権を握りたいのか、「解散カード」を切ろうとする姿勢を示したのである。 少数与党ながら、24年秋の臨時国会を乗り切ったことで、政権運営に根拠ない自信が芽生えたのか、政治センスの乏しさを露呈したのか、石破首相の頭に与野党の主要政党による大連立が「選択肢」にあることも元日の文化放送(12月24日収録、政治ジャーナリスト後藤謙次氏との対談)番組で明らかになった。 もっとも、立憲民主党の野田佳彦代表(元首相)は1月4日、三重県伊勢市での記者会見で、大連立について「パンデミックとか大きな危機があった時の選択肢であって、平時には考えていない」とあっさり否定してみせた。 当面は、1月26日召集の通常国会で、交渉が越年した「年収103万円の壁」の引き上げ幅をめぐる自民、公明両党と国民民主党の3党協議が、2月末の25年度予算案の衆院採決をめぐる攻防につながることになる。 ■「議事録を読むと質問に答えていない」 24年秋の臨時国会では、24年度補正予算は12月17日に立憲民主党の要求で能登半島の復旧・復興費を増額するよう28年ぶりに修正し、自公両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成で成立した。 自民党の森山裕幹事長が国会対策の司令塔となって、国民民主が主張する103万円の壁は178万円を目指して25年から引き上げることや、維新が求める高校授業料無償化の実現に向けた協議を開始することを受け入れるなどして、賛成を取り付けた。 政権維持のためには止むを得ないとはいえ、財源対策を先送りしたポピュリズム(大衆迎合)政治そのものである。