「まるでギャンブル」の衆参ダブル選挙案…いまの自民党・石破政権に広がる“意外な空気感”
■「野党にも責任を共有していただく」 25年が明け、首相は1月6日、三重県伊勢市での年頭記者会見で、「党派を超えた合意形成を図るには、野党にもこれまで以上に責任を共有していただくことが求められている」と述べ、24日召集の通常国会を控え、25年度予算案の審議・成立と内閣不信任決議案への対応に向け、野党各党へ協力を求めた。キーワードは「責任の共有」にある。 国民民主党とは、年収103万円の壁の引き上げ幅をめぐる折衝が、自民党が123万円を提示した段階で越年し、「予算案の衆院通過前後の2月末から3月頭がデッドラインになるのではないか」(国民民主党・古川元久代表代行)とされている。日本維新の会とは、高校授業料無償化をめぐって2月中旬をめどに方向性を得たいとしている。いずれも両党は具体的な財源対策を示さず、与党と責任を共有しようとしていない。 石破首相はポケットに森山氏からもらった新聞記事のコピーを忍ばせている。12月21日の朝日新聞の識者コメントである。 ■「財政ポピュリズム」が吹き荒れている ---------- <考論>「財政ポピュリズム」、国民へ情報足りず 東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹の話 長年、手をつけられなかった所得税の課税最低ライン「103万円の壁」という大きな扉を、国民民主党がこじ開けたことは大いに評価できる。 ただ、同党の案では7兆~8兆円の税収減が生じる。英国のトラス首相が2022年に打ち出した減税策では、財源の裏付けが乏しかったことから、通貨と国債、株式が同時に売られた「トラスショック」が起きた。それが日本でもおきかねないと注視していたが、その懸念は抑えられた。 財源の裏付けなしに大規模な減税を求める「財政ポピュリズム」が吹き荒れている。SNSでは「減税すれば結果として税収増になるから新たな財源は必要ない」という言説が、無批判に受け入れられている向きもある。国民に対して、十分に情報が公表されていないことが影響していると思う。 そこには与党の税制調査会の幹部らだけで、実質的な議論をリードするやり方も影響しているのではないか。政府から独立した立場で、財政や経済の分析をする機関の設置も考えるべきだ。(聞き手・中村建太) ---------- この時のトラス首相は、市場の反乱を受け、英国政治史上最短の在任49日で退陣に追い込まれた。首相や森山氏の問題意識は、日本でも財源の裏付けがない大型減税を実施することで、財政が一段と悪化し、物価高が進めば、場合によっては「石破ショック」が起きかねないということだろう。与党は、国民民主、維新両党を牽制しつつ、どう落としどころを探っていくのだろうか。