実験的「F」の終止符 レクサスRC F アルティメット・エディションへ試乗 魅惑的なV8の音響体験
アルティメット・エディションで終止符
「F」の頭文字で提供される高性能なレクサスが、ドイツ勢へ対峙できるモデルだと、われわれが認知するようになったのは最近といえる。だが、戦う体力は尽きたのだろうか。 【写真】魅惑的なV8の音響体験 レクサスRC F アルティメット・エディション 2+2のクーペたち (136枚) IS FとGS Fという高性能サルーンは、欧州市場から姿を消して久しい。今回試乗したクーペのRC Fも、アルティメット・エディションの投入で終止符が打たれるという。 約20年に渡って、レクサスは実験的な素晴らしいモデルを複数投入してきた。馬力競争にとらわれることなく、ノイジーでエキサイティングなモデルを生み出せる事実を、我々に知らしめてきた。大胆かつ独自性の高い内容で。 LFAの後継に相当するような、ハイブリッド・スーパーカーの噂はある。完全な電動モデルになるという話も聞こえてくる。しかし、5.0L V8エンジンを積んだRC Fを最後に味わわずして、その未来へ触れることはできないだろう。 RC Fの発売は2014年。その頃、メルセデスAMGの63には6.2L V8エンジンが載っていた。2019年にフェイスリフトを受け、シャシーの強化と軽量化が図られ、トラック・エディションが登場。エンジンは、排気ガス規制に伴い馬力が若干削られた。 そのトラック・エディションは19インチの鍛造ホイールを履き、カーボンファイバー製ルーフとボンネット、チタン製エグゾーストでダイエット。カーボンセラミック・ブレーキも得ていた。今回試乗した、アルティメット・エディションのベースといえる。
他にはない雰囲気を漂わせる車内
RC Fの最終仕様では、トランクリッドに載るカーボン製ウイングが展開式に。30台の欧州限定で、シリアルナンバーが振られる。チタンカーバイド・グレー塗装は、250ポンド(約5万円)のオプションだ。 トルクベクタリング機能付きデフに、ファイナルレシオがショート化された8速AT、ローンチコントロールを実装。463psの最高出力と、52.9kg-mの最大トルクを発揮するが、車重は1733kgあり、後輪駆動のクーペとしては軽量とまではいえない。 内装には、高級な素材が惜しみなく用いられる。膨らんだボンネットが、前方視界の一部を形成。ダッシュボードは造形的に凝っていて、他にはない雰囲気がある。 サポート製の高いスポーツシートは、ブルーとブラックのツートーン。ステアリングホイールは、差し色が入ったアルカンターラで仕立てられる。センターコンソールなどにもブルーが展開され、特別な印象を与える。 モニター式のメーターパネルは、ドライブモードに応じてグラフィックが変化。見た目は素晴らしい。ただし、人間工学的には完璧ではない。座面は理想より数cm高く、ヘルメットを被ると天井との余地は殆ど残らない。 インフォテインメント・システムはパッドで操作できるが、前時代的。現在のモデル以上に扱いやすいわけではない。最近では珍しい、CDプレイヤーが備わる。 リアシートは狭いが、このクラスのクーペでは一般的なことといえる。カーボン製のバルクヘッドで仕切られ、背もたれを倒すことはできない。