トヨタ勝田貴元が抱える攻め方のジレンマ。残り4戦で見つけたい「あと1ステップ」/WRCフィンランド
TOYOTA GAZOO Racing WRTのファクトリーがあるだけでなく、北欧フィンランドに居を構える勝田貴元にとって、WRC世界ラリー選手権第9戦『ラリー・フィンランド』は“第2のホームラリー”となったが、総合41位と悔しい結果に終わってしまった。 【写真】パワーステージでトップタイムを刻んだ勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1) 大会を終えた翌日、日本のメディア向けに開かれたリモート取材会にて勝田は、荒れたコンディションやスペシャルステージ(SS)5でのミスの瞬間、さらに自身が感じている週末の進め方の課題について語った。 ●「問題ないと思った」ウエット路面に積もった泥 今回のラリー・フィンランドは、シーズンのなかでもとくにスピードの高いグラベル(未舗装)ラリーとして知られており、少しのタイムロスも許されない一戦。“表彰台以上”を目標に掲げた勝田も、「初日からプッシュしていくアプローチ」で序盤に臨んでいった。 しかし、本格的な走行が始まったデイ2は雨に見舞われた。これまでの走行では晴れで路面もドライであったため、まずはコンディションの見極めとセッティングの調整が必要になったという。 「金曜日は、雨が降ったり止んだりと荒れたコンディションになり、局所的に多く降ったり、小雨が続いたりと読めない状況でした」 「テストではドライだったので雨は不安要素だったのですが、タイム的にはトップ5に入れていたので、『大きく外してはいないかな』という感覚で走っていました」 こうして手探りな状態で始まったデイ2は、SS2からSS4までの3本を終えた時点で総合4番手と順調に駒を進めていた。しかし、迎えたSS5にある中速コーナーでオーバーシュートし、立ち木にヒットしてマシンにダメージを負ってしまう。その瞬間を振り返る。 「序盤の左コーナーで、ブレーキングをした感覚ではグリップ感も結構得ていて、この感覚なら入っていっても問題ないと思って入っていきました」 「ですが、フカフカした泥が路面にあったようで、求めていたようなターンインのグリップが得られませんでした。その結果アンダーステアを出してしまい、流れてしまったコーナリングラインの先にあった木にマシンをぶつけてしまいました」 その結果、ヒットした右リヤタイヤのサスペンション部分を破損。タイヤを固定することができない状況となってしまい、リエゾン(公道)区間を走行不能となりデイリタイアとなってしまった。 ●ペースマネジメントはしていられない。課題となるラリーのジレンマ デイ3での復帰以降は、日曜日のみの総合順位で競われる“スーパーサンデー”へ向けてマシンセットアップの調整を進めた勝田。そして迎えた日曜日は、最終パワーステージでトップタイムをマークし、スーパーサンデーで2位になる確かな速さを披露し、計11ポイント獲得という結果も残した。 「最後はペースにも自信が持てましたが、それだけにがっかりもしました」と、序盤での小さなミスが悔やまれる様子だ。 だが、『もう少しペースを落としていればよかった』とも言えないのがこのラリーという競技。世界選手権の最高峰クラスにおいてはなおのこと、勝田自身も「ペースをマネジメントしていられるようなカテゴリーではない」と、そのジレンマに立ち向かっている。 「プッシュしないといけないときにタイムを出す、そのためのスピードに関しては自分も自信を持って戦えています」 「ですが、その速さを結果に繋げられていないというところが今年は課題になっています」 「ですので、まずは結果をひとつ持ち帰ることが吹っ切れるきっかけになるのではないかと思っています」 2024年シーズンも残すところはあと4戦。そのフィナーレには、地元戦となるラリージャパンも控えている。これからのラリーの進め方については、次のように課題解決への意識を語った。 「まずは週末全体で、速さをムラなく発揮していければ結果に繋げられるのではないかと思います」 「ただ、『ちょっとペースをマネジメントしながら走ろう』ということで結果を残せるほど甘くはないので、自分のなかであと1ステップ、何かを見つけないといけないです」 「残り4戦はそこを見つけたうえで、しっかりと週末の状況を見ながらラリーを組み立てて行けるようにしたいですね」 次戦は9月頭の『アクロポリス・ラリー・ギリシャ』で、WRCは一カ月の夏休みに入る。勝田の2024年シーズンのベストリザルトは、第3戦サファリ・ラリー・ケニアでの2位表彰台だが、サマーブレイク後の残り4戦では、“あと1ステップ”を登ってふたたびポディウム上に返り咲くことができるだろうか。 [オートスポーツweb 2024年08月06日]