街で35年ぶりの新船、曽祖父が作った漁業会社を再生した道のり 漁業は結局「神頼み」、それでも「ノドグロ日本一」を目指して
◆「日本海から食卓へ」消費者に魚を届ける
――漁船の乗組員とはどのようにコミュニケーションを取るのですか? みんな職人肌なので、本当に難しくて…。日々、勉強中です(笑)。 心理学の本やビジネス本を読み漁ったこともありました。 その中で気付いたのは、上下の関係ではなく、横目線で話せるような関係づくりが大切だということです。 お酒は苦手なのですが、飲み会に参加することや、一緒に麻雀をすることもあります。 1度だけ、4日間ほどの漁に一緒に出たこともあります。 私は船酔いで横になってばかりでしたが、それでも漁師の仕事は本当に大変だと痛感しました。 ――浜田あけぼの水産の設立から、2年目に黒字化して、その後の売上高はどのように推移しているのでしょうか。 魚が取れるかどうかは、結局「神頼み」なのが漁業ですが、2012年に10億円だった水揚げ金額は、2018年には12.7億円、2023年には13.3億円と、少しずつですが伸びています。 ――経営が黒字化したことで、会社に変化はありましたか? 黒字が安定してきた2016年には、企業のロゴマーク制定と、社業推進の方針を「海の幸を、明日の命に。」と題した企業メッセージとして明文化しました。 また「日本海と食卓をつなぐ。」という企業理念を策定して、従業員が同じ方向を向いて進んでいけるよう取り組んでいます。 2019年には地元の水産加工業者を完全子会社化し、通信販売による販路開拓を試みています。 将来的に大きく育てていきたい事業です。 2023年には、浜田市で35年ぶりとなる底曳網漁船を新造しました。 ただ、正直まだ経営の難しさを実感しているところです。
◆「ノドグロ日本一」を目指して
――次の100年に向けて、浜田あけぼの水産が描く未来像を教えてください。 まずは魚価を上げて、売上げを伸ばすことです。 それによって地元が盛り上がり、企業再生でお世話になった地域に恩返ししていければと思っています。 特に人気のノドグロの漁獲量は国内でも有数ですが、ただ漁獲するだけなく資源も大事にしながら「日本一」と自信を持って名乗れるように挑戦をしていきます。 魚を獲って、加工・販売、さらに関連事業への進出など、海から消費者への一気通貫の6次産業化を進める。 「日本海と食卓をつなぐ会社」として、消費者に商品を届け、従業員にも理念を浸透させていきたいです。 もちろん難しい事業ではありますが、「美味しい」の声が従業員に届けば、働きがいにもつながるはずです。
■プロフィール
株式会社 浜田あけぼの水産 2011年12月、前身である株式会社 室崎商店の漁業事業を引き継ぐ形で設立。島根県浜田市に本社を置き、沖合底曳網漁業を営む。2019年には地元の鮮魚販売および水産加工品製造・販売会社を子会社化し、新たな商品の開発に取り組んでいる。
文・構成/庄子洋行