路線バスドライバー不足を「消防車」「ゴミ収集車」のドライバーで補うのは賢明か? 大阪・交野市のアイデアを再考する
新人材の可能性は未知数
交野市は、大型1種免許を持つごみ収集車や消防車を運転する市職員を動員して、路線バスの運行を守る方針だ。 全国で3万6000人ものドライバーが不足する見込みを考えると、地方自治体がメインアクターとなり、自家用車有償旅客輸送事業を活用して大型1種免許を持つ職員を有効に活用する手段を検討する価値がある。 2024年5月には、青森県弘前市が退職自衛官にドライバーとして再就職してもらうために、自衛隊と協定を結び、駐屯地でバス運転の体験インターンシップを開催した。このように、バスやタクシーのドライバー不足が深刻な弘前市では、自衛隊と協力してドライバー確保の動きが見られるようになってきた。こうした新しい運転人材確保に期待が集まる。ただし、ワンマン運転のドライバーは運転だけでなく、 ・接客 ・乗客とのコミュニケーション ・ワンマン装置の操作 なども行う必要がある。他業種から来た人々がこれらの業務を受け入れられるかは未知数であり、もし市民が 「従来の路線バスとは異なるサービスレベルだ」 と感じれば、路線バス離れが起きる可能性もある。そのため、住民も運転者の背景を理解し、代替策に理解を示すことが大切だ。
他の可能性
弘前市の自衛隊員活用の事例があるように、自家用有償旅客運送を行える主体として、国は市町村のほかに 「一般社団法人または一般財団法人、認可地縁団体、農業協同組合、消費生活協同組合、医療法人、社会福祉法人、商工会議所、商工会、労働者協同組合、営利を目的としない法人格を有しない社団」 などを想定している。例えば、高山市の高根地区では、 「まちづくり協議会」 が市の資金を基に地域内でドライバーを確保し、地域の移動手段を有償で提供している。まちづくり協議会とは、自治会連合会のエリアを基盤に、市民が実際にまちづくりの活動を行う組織だ。運行はワゴン車を使用しており、存在意義が各地で高まっている。 この協議会が地域の ・退職者 ・兼業希望者 を見つけ出し、地域バスの運行を確保する方向性が期待されている。また、医療法人や社会福祉法人の送迎車両とそのドライバーを活用する方法も考えられる。まちづくり協議会や医療法人、社会福祉法人は地域に密着しており、地域に精通した顔の見えるドライバーを確保することにも期待が寄せられている。