中谷美紀「あろうことか四十路を過ぎて結婚をすることに。見返りを求めない立派な夫だからこそ、私たちの関係は成立している」
2018年にドイツ人ヴィオラ奏者のティロ・フェヒナーさんと結婚した女優の中谷美紀さん。現在では一年の半分を日本で、残りをオーストリアで過ごすという二拠点生活を送っています。オーストリアでは庭造りにご近所付き合いなど、ちょっと不便だけれど自由な日々を楽しんでいるという中谷さん、以前は「自分には、仕事と結婚生活の両立などとてもできない」と思っていたそうで――。 【写真】「国際結婚、夫の一人娘…。自分を変えたオーストリアの新しい家族」について語る中谷さん * * * * * * * ◆あろうことか結婚することになり あろうことか四十路を過ぎて結婚をすることとなった。 相手はドイツ出身の音楽家で、ウィーン国立歌劇場管弦楽団およびウィーンフィルハーモニー管弦楽団、そしてウィーンフィルとベルリンフィルの精鋭たちによる管弦楽アンサンブルPHILHARMONIX にてヴィオラを奏でている。 行かず後家と言われて久しく、この数年は出産できる限界年齢だからと、「一度くらい結婚してみたら?」とか「子供は産んでおいたほうがいいわよ」などと、訳知り顔で余計な介入をされることが少々億劫になっていたものの、あと数年我慢すればそのようなことも言われなくなるのだと聞き流すようにしていた。
◆仕事と結婚生活の両立など、私にはとてもできないと 旅に出る自由や、寝食の自由は独身であるからこそ謳歌できるものであるし、何を誤ったのか、演じるという奇妙な職業を選んでしまった都合上、否、この職業でなくとも、生来の性さがによりひとり思索に耽る時間はどうしても必要で、仕事と結婚生活の両立など、私にはとてもできないと思っていた。 それならば「専業主婦になればいいじゃないか」という向きもあろうが、女優という職業に執着している訳でも何でもなく、人様が稼いだ、あるいは相続で引き継いだお金をありがたく使わせていただくという立場におとなしく収まるような人間でないことは、己が一番よくわかっている。 ところが、世の中には同じように自由を謳歌し、お互いに自立した関係を望む男性もいるもので、ひとり気ままに迎えるであろう老後に向けて万全な準備をはじめていた私がはからずも結婚した相手は、女性が専業主婦になることを求めず、自分の身の回りのことくらいは、自分でできる生活力が身についており、結婚という制度にも過度な期待をしていない人だった。
【関連記事】
- 中谷美紀「国際結婚、夫の一人娘……オーストリアで私を変えた新しい家族」
- 中谷美紀 ごみ出しでは改めて東京のマンションのありがたさを感じたりして。ご近所づきあいに山歩き、庭仕事。ザルツブルクでの「憧れの田舎暮らし」について
- 中谷美紀 野菜中心の食生活がヘルシーだと信じて疑わず、お肉や卵を控えていたら…「よかれ」と思って摂取していたものが仇に、控えていたものが最も必要なものだった
- フランスでは高齢者をどう支えている? 政府は自宅で長く暮らすのを重視、家族の手に負えなくなれば躊躇なく他へ…。日本のような「どうにもならない」悲劇が起こりえない理由
- 義母を「美しい母」と呼ぶフランスの嫁姑事情とは? 日本のようにベッタリ付き合う必要はなし、一軒の家に二世帯が一緒に暮らすこともまず「あり得ない」