オバマ大統領が涙の演説 規制へ立ちはだかる「銃社会アメリカ」の壁
米ホワイトハウスで5日、オバマ大統領が銃規制強化策を発表しました。2012年12月にコネチカット州の小学校で多数の児童が犠牲になった無差別乱射について触れたオバマ大統領は、涙を浮かべながら「子供たちの事を考えると、気が狂いそうになる」と語り、この様子は世界中のメディアに大きく取り上げられました。大統領令というカードを使って、これまで規制が事実上なきに等しかった見本市のようなイベントにおける銃の売買においても、規制を徹底させると決意を見せたオバマ大統領。2期目の最後の年で、アメリカ社会を大きく変える可能性のある銃規制への取り組みは、果たして成功するのでしょうか? 【写真】米警官による黒人暴行事件 「息ができない」アメリカの人種と犯罪の現在
20世紀初頭アル・カポネの時代からの議論
2年前、コネチカット州の小学校で発生した乱射事件の直後に、銃規制の強化を議会と共に行うと公言していたオバマ大統領ですが、規制の強化に向けて全く前進しない現状に見切りをつけ、議会の承認が必要なく、強制力のある大統領令を発令したことで、銃規制に対する自らのスタンスを明確にしたと言えます。 アメリカで銃に対する規制が開始されたのはいつ頃からなのでしょうか? 19世紀の西部開拓時代にも銃による死者が多かったものの、実際に法律で銃の購入に規制をかける動きは1934年までほぼ存在しませんでした。当時、アル・カポネに代表されるギャングの抗争がアメリカの都市部で激化し、1933年には遊説中のフランクリン・ルーズベルト大統領の暗殺未遂事件も発生。イタリア系移民の男性は質屋で購入した銃を使って、ルーズベルト大統領を狙ったものの、弾は大統領の隣にいた当時のシカゴ市長に命中。シカゴ市長は死亡しています。 こういった事情から、アメリカでは1934年に銃火器法が施行され、ギャングが好んで使っていたマシンガンや銃身と銃床を短くしたショットガンに高い税金を課し、販売にも規制を設けました。また、4年後の1938年には法改正が行われ、州を超えて行われてきた銃や弾薬の販売にも規制がかかりました。そして、アメリカの歴史上初めて、全米各地の銃砲店に登録の義務を課し、銃の売買記録を店が管理することになりました。 ケネディ大統領やキング牧師が射殺された1960年代、当時の大統領であったジョンソンは、犯罪歴のある者、精神障害を持つ者に対して銃器類の販売を禁止する法案に署名しました。レーガン政権下の1986年には「銃所有者保護法」が作られます。この法律ではオートマチック銃やマシンガンを将来的に個人へ販売することを禁止するものでしたが、法案を通す際に全米ライフル協会(NRA)や協会に近い議員たちとの間で政治的な妥協が見いだされ、アメリカ国内にある銃器類を全てデータベース化するという試みは中止に追い込まれています。