衆院本会議で立憲民主党の野田佳彦代表の代表質問に対して答弁する石破茂首相＝７日午後、国会内

　石破政権初の国会論戦となる与野党の代表質問が7日、始まった。衆院解散が2日後に迫る中、野党は自民党「裏金議員」の一部を衆院選で非公認とする石破茂首相の方針を「大甘」だと追及。首相の持論と新政権の方針の整合性を巡っても集中砲火を浴びせた。首相は慎重な答弁に終始し、「変節」批判への説明を十分に尽くしたとは言い難い。 【ひと目でわかる】自民党裏金事件の構図 　◇首相防戦 　「大半が公認されるのではないか。本当に国民の理解を得られるのか」。トップバッターとして質問に立った立憲民主党の野田佳彦代表はこう述べ、「相当程度非公認が生じる」とした首相の説明に疑問を突きつけた。 　首相は6日、党内処分を受けた萩生田光一元政調会長ら少なくとも6人を非公認とする方針を表明。ただ、6人以外の処分対象者については「地元の理解が十分進んでいるか」などを基準に公認の是非を判断するとした。党幹部は「当選可能性も加味する」と説明。旧安倍派幹部に対して「厳しい姿勢」を示す一方、議席減を最小限にとどめたいとの計算がのぞく。 　野田氏は総裁選の出馬表明の際に「厳正な対応」を示唆した首相が「日々トーンダウンした」と皮肉り、日本維新の会の馬場伸幸代表は「裏金に関与した全員を非公認とすべきだ」と切り捨てた。首相は「甘い処分で幕引きを図るものだとは認識していない」と防戦一方となった。 　◇「自分の言葉」応じず 　首相が総裁選で約束した予算委員会開催を見送り、政権発足から戦後最短で衆院解散に打って出ることも改めてやり玉に挙がった。「どれほど耳ざわりのいい言葉を使っても、やっていることは党利党略だ」（国民民主党の玉木雄一郎代表）などと厳しい言葉が次々に浴びせられた。 　首相は代表質問前、予算委に応じない代わりに「できるだけ丁寧に分かりやすく説明する」と語っていた。しかし、野田氏が原稿に頼り切らずに質問し「自分の言葉で答弁してほしい」と求めたものの、首相は手元の原稿を見つめ「安全運転」に徹する場面が目立った。 　政策面の「言行不一致」も野党の標的となった。首相は得意の安全保障分野の持論である日米地位協定改定などを所信表明演説に盛り込まなかった理由をただされ、「まずは喫緊の課題に取り組む」とかわした。総裁選中に意欲を示した金融所得課税強化について問われると、「検討は考えていない」とまたもや後退した。 　「発言を平気で覆す。今後どんな発言をしようと国民は信用できなくなる」。共産党の志位和夫議長にこうたしなめられると、首相は「誠心誠意、国民の判断材料を示す」と語るしかなかった。 　◇地方組織から不満 　裏金議員の一部を非公認とする首相の方針は足元の自民党内にも波紋を広げている。 　党本部で7日開かれた党東京都連の緊急会議では、ベテランの萩生田氏が非公認の見通しとなったことに不満の声が上がった。井上信治都連会長は「なぜもっと早く決断しなかったのか」と党執行部の対応を批判。「本当に厳しい衆院選になる」と危機感をあらわにした。 　首相や森山裕幹事長は6日の方針表明前、非公認にしないと関係議員に示唆してきた経緯があり、旧安倍派を中心に「裏切られた」などと不信が渦巻く。比例単独での出馬を目指す裏金議員の扱いなども決まっておらず、火種はあちこちにくすぶっている。