理工系学部「女子枠」急増の背景にあるもの。大学入試の新傾向から見る日本の未来
「女子枠」は逆差別?
「女子枠」の導入には、一部で否定的な声もあります。たとえば、「女子が優遇されることで、学部自体の偏差値が下がるのでは」といった懸念や、「女子だけを優先するのは逆差別ではないか」といった意見です。 ここで留意しておきたいのは、「女子枠」を設けている場合も学力テストを課すことがほとんどである点です。また、特定の科目を優遇している場合は、大学入学までに補講を行うなどして、講義の質や学部自体の偏差値を下げない工夫がされていることが多いです。 また、先述のとおり、日本の理工系分野においては、本人以外の原因で女子が不利な状況に置かれ続けてきた歴史や社会的な背景があります。女子にとってはそもそものスタート地点が男子と違うことを考えると、「女子枠」はそのハンデを減らす施策であるという見方もできるでしょう。
まとめ~今後のカギは「社会全体で」「小中学生のうちから」
「理工系女子」の増加により、日本全体の活性化や、産業発展につながることが期待されます。実現のためには、教育、産業、社会など、それぞれの領域にある課題を一つずつ解決していく必要があります。 たとえば、小・中学校のうちから理工系を身近に感じられるようなキャリア教育の充実、すべての人にとって働きやすい職場環境の整備、お手本となるような女性教員・研究者の増員といったことです。 これからの時代は、性別に関係なく、自分の進む道は自分自身で考え、やりたいことを実現していくことがますます大切になります。一人ひとりの力を存分に発揮できれば、おのずと社会全体が活性化し、科学技術の発展にもつながります。そうした社会のあり方を、皆で考える時が来ているようです。 取材・執筆:神田有希子
*1 ベネッセコーポレーション調べ(2024年8月時点)。 ※詳細は各大学の募集要項等でご確認ください。 *2 東京科学大学 ホームページより *3 芝浦工業大学 ホームページより *4令和5年度文部科学省「学校基本調査」より理学部・工学部を合算して算出(山田進太郎D&I財団調べ) *5 OECDが実施するPISA2022の結果より