景気堅調を続けるインド【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
自然利子率の上方修正を通じて大幅な利下げ観測をけん制
準備銀行は7月18日に発行したmonthly bulletin(準備銀行が発行する月報、分析レポートや重要統計などを掲載)の中で、潜在成長率が2024年1-3月に5.9~8.3%(平均値:7.1%)へ上方修正されたことに合わせて自然利子率が1.4~1.9%(平均値:1.65%)へ上方修正されたという調査結果を明らかにしました。 自然利子率は、景気への影響が引き締め的でも緩和的でもない中立的な実質金利を意味します。Bloombergコンセンサスでは2024/25年度のインフレ見通しが4.5%であり、リスクプレミアムを考慮すれば、景気中立の名目金利は5.9~6.4%を超えることになります。現行の政策金利は6.50%なので、準備銀行内では、利下げを行うにしても小幅、場合によっては利下げなしでも景気には問題ないという見方が浮上していると推察できます。逆に言えば、大幅な利下げを行えば景気への影響が緩和的になってしまうことから中長期的なインフレをターゲット近辺で抑制することが難しくなるとみます。
8月の決定会合ではダス総裁のコメントがタカ派へ
8月8日に開催された準備銀行の決定会合の結果発表に関する記者会見で、ダス総裁のコメントは前回6月と比較するとタカ派になりました。ダス総裁は、インド景気の堅調さを強調すると共に、現時点ではインフレ抑制に集中する意向を示しました。また、7-9月期の消費者物価上昇率はベース効果で鈍化が見込まれるものの、10-12月期以降はターゲットを超える4%超で推移する見通しを示しました。自然利子率の上方修正とこうしたコメントから、現行の政策金利の据え置き期間が長期化する意向を示唆したと解釈できます。弊社は、準備銀行の利下げは2025年7-9月期、10-12月期にそれぞれ0.25%ポイントと小幅にとどまると予想しています。 (2024年8月20日) 石井 康之 三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフリサーチストラテジスト ※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。 ※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『景気堅調を続けるインド【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。
石井 康之,三井住友DSアセットマネジメント株式会社
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