要件曖昧な「危険運転致死傷」、速度やアルコール量に数値基準を…検討会「ドリフト走行も対象に」
危険運転致死傷のあり方をテーマにした法務省の有識者検討会は13日に開いた会合で、高速度や飲酒運転による事故への適用要件を明確化するため、数値基準を設けるよう促す報告書案を示した。車のタイヤを横滑りさせながら運転する「ドリフト走行」を処罰対象に加えることも盛り込み、必要な法整備を求めた。
自動車運転死傷行為処罰法の危険運転致死傷は、「制御が困難な高速度」や「アルコールの影響で正常な運転が難しい状態」で車を運転し死傷事故を起こした場合などに適用される。ただ、その要件が曖昧で、大幅な速度超過でも、運転ミスに適用される「過失運転致死傷」にとどまるなど判断にばらつきが生じ、遺族側から批判の声が出ている。
報告書案では、危険な運転の実態に即して処罰できるよう、車の速度や運転手のアルコール濃度について数値基準を設け、これを超えた場合は一律に処罰する案が明記された。
具体的な数値に関しては、これまでの議論で出た意見が記載された。速度を巡っては「最高速度の2倍や1・5倍」とする案を紹介。飲酒は、呼気1リットル中のアルコールが酒気帯び運転の基準と同じ「0・15ミリ・グラム以上」のほか、「0・25ミリ・グラム以上」「0・5ミリ・グラム以上」とする考えがあったとされた。
「ドリフト走行」も、危険性が高いとして、新たに処罰の対象にするよう検討すべきだと言及した。
一方、スマートフォン使用などの「ながら運転」を処罰対象にするかも主な論点となっていたが、「悪質なものだけを切り出すのは困難」などと否定的な見解が記された。赤信号を「殊更に無視」という条文の見直しも、「これに代わる要件を適切に規定することは難しい」とされた。
検討会は次回27日の会合でも議論を続け、できるだけ早期に報告書の取りまとめを行う。これを踏まえ、法務省が法改正の必要があると判断すれば、法制審議会(法相の諮問機関)に諮問するとみられる。
危険運転を巡っては、自民党のプロジェクトチーム(PT)が昨年12月、政府に法改正を提言。遺族や法曹三者、大学教授らによる検討会が今年2月から改正の是非などを議論してきた。