アディダスの古着のトラックパンツ【栗山愛以、モードの告白】
そんなわけで、何となくスポーツとファッションを結びつけるきっかけとなったのはアディダスであるような気がしてきますが、アディダスのデザインに私を含むファッション好きが惹かれるのは、他ジャンルのワードローブにも合わせやすい、スリーストライプスの簡潔さやシンプルな色使いが大きいのか。私が一番重宝している黒地に白のスリーストライプスが入ったナイロンのトラックパンツは、シックなスタイルにもしっくりきて、それでいてスポーティではあるのでちょっと「外した」感じも出ます。ちなみに私が持っているアディダスは、コラボものやシューズを除けば古着のみ。スポーツをするわけではないのにパリッとした新品だと宝(機能性)の持ち腐れであるような気がして申し訳なく、少々年季が入ってくったりしているくらいの方がこちらも落ち着くからです。
しかし、シンプルなデザインなら、他のスポーツブランドでもたくさん見つけることができるような。ではなぜ私はアディダスを思わず手に取ってしまうのか。完全に好みの問題だと思われますが、ということはつまり、私の根底にはアディダスのトラックスーツにゴールドのごついアクセサリーを合わせて楽しんでいた1980年代ヒップホップ界の人々と同じバイブスが流れているのかもしれません…! TEXT BY ITOI KURIYAMA 栗山愛以(くりやまいとい) 1976年生まれ。大阪大大学院で哲学、首都大学東京大学院で社会学を通してファッションについて考察。コム デ ギャルソンのPRを経て2013年よりファションライターに。モード誌を中心に活動中。