「基本給は5万5000ドル、帝王切開は2500ドル」という知られざる代理母の値段票まで…増加が懸念される危険な「代理出産」
新たな貧困ビジネス
もうひとつの問題は、新たな貧困ビジネスが生み出されてしまうことだ。先進国に住む依頼者が、発展途上国の女性に出産を依頼する「生殖アウトソーシング」は、2000年代から普及した。当初はインドやタイなどで盛んだったが、さまざまなトラブルがあって代理出産の利用が禁止され、いま市場は代理出産を商業的に認める中南米の国や東欧に移っている。ちなみに東欧では、戦火に苦しむウクライナが代理母の代表的な供給地となっている。 「国際社会には、ゲイカップルをターゲットとした代理出産市場が存在しており、ある団体は欧米各国で『男性専用代理出産見本市』を開催しています。私はその団体の“値段表”を持っていますが、ひどいものです。代理母の基本給は5万5000ドルで、そこにさまざまな価格が上乗せされるのです」(同) たとえば帝王切開を実施する場合は2500ドル、(卵巣など)生殖機能の臓器を失った場合は3500ドル、子宮摘出術を受けた場合は5000ドルなど、 「女性の臓器までが値段として示されている。つまり裕福な男性が集まって、子を持つ権利を主張しながら、女性の身体をどう利用するか、いくらで買うかを相談しているわけです。グロテスクとしか言いようがありません」(同) 国内には代理出産を規制する法律はなく、現行の民法には、代理出産にて出生した子の親子関係に言及がない。そのため日本人でも、代理出産が認められた国で子どもを授かることはできる。だが国内では日本産科婦人科学会が現状、「代理懐胎」の実施を認めていない。 有料版では、同性婚をめぐる日米の問題、日本が“供給国”にもなり得る代理出産の“危険性”について、詳報している。
上條昌史(かみじょうまさし) ノンフィクションライター。1961年生まれ。慶応義塾大学文学部中退。事件、政治、ビジネスなど幅広い分野でインタビューやルポを手がける。共著に『殺人者はそこにいる』(新潮文庫)など。 デイリー新潮編集部
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