感動のラスト…NHKドラマ『かぞかぞ』が最後に紐解いた錦戸亮”耕助”の物語とは? 最終回考察
河合優実主演のドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が地上波の放送を終了した。岸田奈美のエッセイを元にした本作は、2023年にNHKBSプレミアム・NHKBS4Kで放送され大反響を呼んだ。今回は、最終話のレビューをお届け。(文・ 明日菜子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】涙の最終回…『かぞかぞ』貴重な劇中写真はこちら
『かぞかぞ』がたどり着いたハッピーエンド
「この家族と笑いつづけてやる。家族の笑顔を守りつづける」 「そうや、大丈夫なんや。うちの家族は全員、大丈夫なんや。俺が大丈夫にしたるんや」 いつも自分にそう言い聞かせていた父・耕助(錦戸亮)は、志半ばで亡くなった。父が生前に乗っていた愛車・ボルちゃんを七実は最終回で買い戻す。それはまるで突然途絶えた父の物語をふたたび手繰りよせているようにも見えた。 『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(NHK総合)が、ついに最終回を迎えた。若くして亡くなった父、車椅子ユーザーになった母、ダウン症の弟、認知症になった祖母、その中心にいるのが主人公の七実だ。彼女の言葉を借りるなら“どれかひとつでもあれば、どこぞの映画監督が世界を泣かせそうな”役者が揃った岸本家の10年間は、どんな小説よりも目まぐるしかった。 しかし『かぞかぞ』は、強靭なアベンジャーズ一家が数々の困難を乗り越えるドラマではない。「家族」という“属”に悩む七実たちにいつかの自分を重ねた視聴者も多いだろう。 思い返せば、波瀾万丈な岸本家のドラマは、ボルちゃんに乗って家族全員で耕助の墓参りに向かうシーンから始まった。つまり、この物語は“大好きな家族の死”から幕を開けたのだ。 他人とは共有できない痛みを分かち合い、互いを支え合いながら生きてきた家族が、別々の場所で生活するようになったのは、耕助の死による深い悲しみにひとつの区切りがついたからだとも捉えられる。だが、本作のハッピーエンドは、七実たちが耕助の死を受け止めたその先にあった。