猛スピードで逆走してくる恐怖体験…!電動キックボード「信号無視、二人乗り」違法行為が急増のワケ
「電動キックボードを見かけるたびにビクビクする」
「自宅近くに一方通行の坂道があるのですが、そこをマイカーで走っていたら、坂を登り切ったところで突然、電動キックボードと出くわして、急ブレーキを踏みました。一方通行の出口側から、道路の中央を猛スピードで逆走してきたんです。間一髪のところで正面衝突は回避しましたが、ぶつかっていたら自分が加害者になっていたかもしれない。あれ以来、電動キックボードを見かけるたびにビクビクしながら運転しています」 【画像】これは危ない…!はしゃぎながら"二人乗り"に逆走も… 電動キックボード「違反現場」写真 都内在住の会社員・Aさんが語るこの恐怖体験、かなりのドライバーが共感できるのではないだろうか。 電動キックボード利用者の交通違反は’23年7月から’24年6月までの1年間で実に2万5000件にのぼる。同時期に発生した人身事故の件数は219件。’22年の41件から大きく増加した。’23年12月には30代女性が赤信号で交差点に進入し、バスと衝突して死亡するという痛ましい事故も起きている。FRIDAYもこれまで、「二人乗り」や「信号無視」などの違反行為を何度も目撃してきた。 交通違反や事故件数の急増は、利用者の急増によるものだ。フリーライターの橋本愛喜氏が解説する。 「’21年4月、東京や大阪などで実証実験という形で電動キックボードのシェアリングサービスが始まりました。最高速度は15㎞/h。運転免許を持っている人に限り、乗ることができました。ところが’23年7月、道路交通法が改正され、新たに『特定小型原付』という区分が作られた。 最高速度20㎞/hまでの電動キックボードであれば、16歳以上なら免許なしで乗れるようになった。この法改正によって急速に普及し、業界最大手の『LUUP』のポート(レンタルと返却ができる場所)数は’23年8月時点の4000からわずか1年で1万ヵ所を突破しました」 ◆手軽さこそが違反や事故の原因に 『LUUP』の利用方法は極めて簡単だ。スマホに専用のアプリをインストールし、街中のポートにある電動キックボードのQRコードを読み込むだけで、基本料金50円+時間料金15円/分で利用できる。既存の電動アシスト自転車をレンタルできるサービス「バイクシェアサービス」の料金は165円/30分。『LUUP』は安さと手軽さで若者を中心に人気を集めている。 だが、その手軽さこそが違反や事故の原因となっていた。橋本氏が言う。 「『特定小型原付』は自転車並みの扱いです。Aさんが経験した電動キックボードの逆走も、一方通行の標識に『自転車を除く』と表記されていたら、交通違反ではなくなります。ややこしいのは、ほぼ自転車扱いでありながら、曲がる際にウィンカーを出す必要があったり、車両用の道路標識に従わないといけなかったりすること。ところが車の免許を持たない利用者は自転車感覚で走るため、事故やトラブルが相次いでいるのです」 『LUUP』は法改正に合わせて、「交通ルールテスト」を導入し、電動キックボードの利用者に全11問正解を求めた。だがその内容は「どんな歩道でも走行して構わない」「原則、車道の最も左端に沿って走行しなければならない」といった簡単な○×問題で、誤答しても何度でも繰り返して受験できるというお粗末なもの。違反や事故が多発していることにどのような対策を講じているのか、FRIDAYの取材に『LUUP』の広報はこう答えた。 「一部、事故・違反の発生につきましては、残念に思うと共に、重く受け止めています。悪質な違反行為を行うユーザーに関しては、警察と連携の上でアカウント停止などを含む対応を進めています」 『LUUP』は今年から「交通違反点数制度」を導入し、違反点数によって利用を制限しているが……、自動車評論家の国沢光宏氏はこう警鐘を鳴らす。 「まだまだ取り締まりが足りない。これまでにないタイプの乗り物で、取り締まる側も不慣れなのでしょうが、強化しないと無法地帯化する恐れがあります。集中的に取り締まる強化月間などを実施することで、法令遵守が進むと思います」 CO2の排出が少ないことから「持続可能な社会構築」を謳う電動キックボード。運用の仕方によって、″持続可能な乗り物″にも、″路上のならず者″にもなり得る。 『FRIDAY』2024年12月6日号より
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