日本発、九谷焼や有田焼の「工芸ルービックキューブ」 高額でも人気
メガハウスには、ルービックキューブ各面のパネルを九谷焼などで作った商品シリーズがある。日本の伝統工芸の技術を生かし、玩具をアート作品としても楽しむという市場を新たに開拓した。これまで3つの商品を販売してきたが、2024年9月に佐賀県の有田焼で作った新商品を投入した。 【関連画像】2018年に九谷焼でパネルを作ったルービックキューブ「九谷焼ルービックキューブ」を5万4000円で販売したところ好調だったという 玩具メーカーのメガハウスが開発した「工芸ルービックキューブ」シリーズは、ハンガリー発祥の世界的な玩具のルービックキューブと日本の伝統工芸を融合したユニークな商品だ。 これまでに3商品が販売され、各面3×3のパネル部分を焼き物や銅器、金箔の製造などの技術で作った。一般のルービックキューブ同様に回して遊べるが、「飾れるアート作品」としても楽しめる。 「長く遊んでいただけるルービックキューブにしようと、日本の伝統工芸との融合に着目した。時代を超えて受け継がれるものに触れ、人が本来、持っている感性を呼び起こすものにしたいと考えた」(メガハウス トイ事業部ゼネラルマネージャーの永岡祐一氏) 伝統技術を持つ各地の職人たちが開発に参加。手作業で作るため大量生産できず、いずれも受注生産で展開している。どれも数十個しか作れず、すでに3商品の受注は終了した。価格は9万9000~30万円(税込み、以下同)と一般のルービックキューブより高いが、ルービックキューブファンの人や日本の伝統工芸品が好きな人が購入するようだ。 受注がスタートすると、メガハウスのWebサイトに各商品の製作過程などの写真を豊富に掲載したり、開発に参加した各地のショップなどにも実際の商品を一部だけ置いたりして、工芸ルービックキューブをアピールしている。伝統工芸の活性化に取り組むデザイン会社、エイジデザイン(金沢市)が企画・デザインを担当する。 ●製造過程は伝統工芸品と同じ 18年に九谷焼でパネルを作ったルービックキューブを販売したところ、好評だったので工芸ルービックキューブとしてシリーズ化を決断した。 シリーズ初の商品は「匠一弾 工芸ルービックキューブ 九谷焼 五彩」で、パネルは石川県の伝統工芸「九谷焼」の焼き物だ。22年2月に発売し、価格は9万9000円だった。 2つ目は、富山県高岡市の伝統工芸「高岡銅器」の技術で作ったパネルを用いた「匠二弾 工芸ルービックキューブ 高岡銅器 折井発色」。22年11月に発売し、価格は22万円。 3つ目が「匠三弾 工芸ルービックキューブ 金沢箔 金箔」で、金沢市周辺の伝統工芸「金沢箔」でパネルを作った。23年12月に発売し、価格は30万円。 そして24年9月、「匠四弾 工芸ルービックキューブ 有田焼 結晶釉」の受注を開始。価格は25万円だ。美しい青白磁で知られる窯元の藤巻製陶(佐賀県有田町)が開発に参加。6色の美しい有田焼のパネルが印象的な商品に仕上げた。これまでは北陸地方の伝統工芸がメインだったが、今回から日本全国の伝統工芸にもシリーズを広げていく計画。 いずれの商品もパネルの開発に際しては、通常の伝統工芸と同じ製作プロセスを取る。パネルの大きさは14~16mm2と小さく、1つのルービックキューブを作るには54個も必要になる。 例えば焼き物の場合、パネルを窯から出してみると大きさが微妙に異なったり、色合いが変わったりする。そこで多くのパネルを焼き、サイズや色合いが適切なパネルだけ使用。それだけ手間がかかっており、ルービックキューブでありながら小さな伝統工芸品ともいえるわけだ。日本の伝統工芸には、焼き物や銅器、金箔以外にも様々な技術がある。今後は木工や織物などとの融合も面白そうだ。
大山 繁樹