セブン解体で岐路に立つ「コンビニATM」の王者、非連結化なら伊藤忠主導で業界再編に発展も?
「柔軟に動いていくオプションを模索している」。11月11日、セブン銀行が開いた2024年度中間期の決算説明会。松橋正明社長が言及したのは、親会社のセブン&アイ・ホールディングス(HD)が進めている組織再編への対応だ。 【図表】セブン銀行の上位株主一覧。スーパー2社のグループ分離でセブン銀行も非連結化される可能性が浮上している セブン&アイHDはコンビニ事業を中核に定める一方、スーパーマーケットや専門店事業の切り離しに着手した。現在入札が進行中で、2024年度内にもこれらの売却を完了させる見通しだ。 売却対象となる企業群に、セブン銀行は含まれていない。にもかかわらず同社が気を揉むのは、イトーヨーカ堂とヨークベニマルがHDの子会社でなくなると、セブン銀行自身も自動的に子会社から外れる公算が大きいからだ。
■スーパー事業分離の流れ弾 2024年3月末時点で、セブン&アイHDはセブン銀行株式を間接的に計46%保有する。議決権ベースでは50%に満たないが、影響力を考慮して連結対象となっている。 ところが、スーパー2社がグループから分離されると、セブン&アイHDの保有比率は38%まで下がり、セブン銀行も連結から外れて持ち分法適用会社となってしまう。セブン&アイHDは金融事業にもメスを入れる意向を示しており、セブン銀行を子会社にとどめる策は打たない模様だ。
セブン&アイHDとの関係が断ち切られるわけではないものの、グループとの間に距離が生まれることはセブン銀行にとって無視できない。 セブン銀行はATMを運営する傍ら、2023年に電子マネー「ナナコ」やクレジットカードを発行するセブン・カードサービスをセブン&アイHDから買収した。グループ各社の会員基盤である「セブンID」を活用し、キャッシュレス決済を核にした経済圏を構築する狙いだ。そうした中での非連結化となれば、成長戦略に狂いが生じかねない。
実際、親会社のセブン&アイHDは、セブン銀行が推進する経済圏の構想とは相反する動きを見せる。 「何がしたいのだろうか」。業界関係者が首をかしげるのは、セブン-イレブン・ジャパンが10月に発表した、三井住友カードとの連携だ。同社のカードをセブンイレブン店舗で利用すると、Vポイントが最大10%還元される。 実はこの時、セブン銀行も同様のサービスを11月から始める予定だった。セブン・カードサービスのクレジットカードを利用すると、同じく10%のポイント還元が受けられる内容だ。