訪日外国人が注目する「スナック巡りツアー」、夜の文化体験を楽しむ外国人たちの姿と、今後の可能性を同行して取材した
ディープな日本らしい体験として、訪日外国人のあいだで「Japanese snack bar hopping tour (スナック巡りツアー)」が注目を集めている。日本の夜の楽しみ方として、オンラインスナック横丁文化社が2022年12月から始めた。一見の日本人にとってもハードルが高いスナックを外国人向けの文化体験として商品化。日本観光の課題であるナイトタイムエコノミーの活性化にも一役買っている。外国人にとって未知のスナックは観光コンテンツとして成り立つのか。今年10月にオランダからの来日したツアー参加者に同行してみた。場所は新橋。2軒のスナックを巡った。
カラオケで醸し出される一体感
ツアーに参加したのはニールスさん、メリッサさん、デニスさん、アニカさんの4人組。メリッサさんは2回目の訪日、あとの3人は初めての日本だ。ニールスさんとメリッサさんは約2週間、デニスさんとアニカさんは実に1ヶ月ほど滞在するという。 新橋駅のSL広場に集合したのち、金曜日の夜で賑わう路へ。まずは鳥森神社に参拝する。ガイドに教えられながら、二拝二拍手一拝。慣れない所作ながらも、拝殿の前では神妙な表情になる。 1軒目のスナックは、その路地にある「栗奴」。店内に入ると、日本人とっては昭和レトロな、外国人とっては、おそらく、異次元の世界が広がる。4人は、狭い店内を見回しながら、感嘆の声をあげ、ママさんに誘われて、ソファに腰を下ろした。「こんなところはオランダにはないなあ」とニールスさんが一言。3人も頷く。 このツアーでは、スナックのことを知ってもらおうと、ちょっとした工夫を凝らしている。ガイドがフリップを使いながらクイズを出す。例えば、「この女性は、なんと呼ばれるでしょうか?」。3択から答えが「ママ」だと知ると、メリッサさんは「ママって、Motherの意味でしょ」とちょっと不思議そうな表情をした。 次に簡単な日本語で注文の仕方を教える。それに倣って、それぞれドリンクを注文。「ママ、ハイボール、クダサイ」。ママさんは、それに「日本語」で応える。栗奴がこのツアーを受け入れるのは、これが4回目だ。ママさんの英語は片言だが、コミュニケーションが不思議と成り立つ。メリッサさんが「家庭的な雰囲気ね」というこの独特の空間が、それを可能にしているのかもしれない。 スナックといえば、カラオケ。4人が選んだのは、アウトキャストの「Hay Ya!」、ワムの「ラストクリスマス」。そして、クィーンの「ボヘミアン・ラプソディ」では、「Mama~、OOO~、Didn’t mean to make you cry」のくだりで、大袈裟にママさんに感謝を示した。いつの間にか、4人は定番のタンバリンやスティックライトも手に。なんの衒いもなく、自然体で楽しんでいる姿に、こちらまで楽しい気分になってくる。小さな空間で醸し出される一体感。その心地よさは、日本人でも外国人でも変わらないのだろう。