鳥栖のF・トーレスが今なお不発のなぜ?
フォワードは味方に上手く使われて初めて生きる。どんなにビッグネームでも、新天地でいきなり順応するのは至難の業と言っていい。しかし、フォワードには万国共通の傾向もある。パスが通らず、前線で孤立してしまう状況で中盤に下がり、ボールを触ることでリズムを作ろうとすることだ。 スペインを皮切りにイングランド、イタリアで活躍し、スペイン代表としても38ゴールをあげたトーレスも例外ではなかった。キャプテンを務める左サイドバックの吉田豊は、攻め上がってからいざ、クロスを入れようとした瞬間に「トーレスがいないことがあった」と振り返る。 「自分たちがしっかりとボールを運んで、トーレスにペナルティーエリアのなかで仕事をしてもらえるような状況を作らないといけない。普段の練習でもペナルティーエリアのなかにおける仕事の精度はものすごく高いので、いいボールを上げられなかったことも含めて僕たちも反省しています」 中盤に下がってきても、ボールをもらう際のトラップ、ターンからドリブルやパスを繰り出す動きにはいっさいの無駄がない。それでも、トーレスは相手ゴール前にいてこそ脅威になる。試合中には大きなジェスチャーを介して、吉田が「下がってくるな」とトーレスに伝えた場面もあった。 「ベンチからも『前にフィニッシャーがいない』という指示があったので。夢生君だけだと相手もつかみやすいし、フィニッシャーにはペナルティーエリアのなかで仕事をしてもらうのが一番なので、そこはコントロールというか、後ろから指示を出しました」 後半20分からは金崎、期限付き移籍していた韓国Kリーグ・蔚山現代から復帰した豊田陽平、東京五輪世代のホープ田川亨介の3トップで攻めたサガンだったが、最後までゴールは奪えなかった。 これでチームは直近の6試合を4分け2敗とひとつの白星もあげられず、奪った得点もオウンゴールによる1点だけと極端なゴール欠乏症に陥っている。J2降格圏の17位は変わらず、最下位の名古屋グランパスには勝ち点2差に追い上げられ、16位のガンバ大阪とは同2差に開いた。