加藤誉樹レフェリー単独インタビュー【後編】…「スーパースターたちに囲まれているという意識は全くありませんでした」
バスケットボールキングのコンテンツとしてBリーグ開幕前の恒例となっている「JBA審判グループに聞く!」。この企画は来るシーズンから採用される新ルールの解説やJBA審判グループの取り組みについて紹介し、リスペクト文化醸成のためにスタートした。今回で5年目を迎えるが、本編に入る前にレフェリーとしてパリオリンピックに参加した加藤誉樹氏のインタビューをお届け。東京オリンピックに続いて2度目の五輪レフェリーとなった加藤氏に、話題となったアメリカ戦でのやり取りについても話をうかがった。 文・取材=井口基史 前編はこちら
世界中で話題になったあのシーン
7月31日に行われた男子グループフェーズ・アメリカvs南スーダンで、アメリカ代表のアンソニー・デイビス(ロサンゼルス・レイカーズ)へアンスポーツマンライクファウル(UF)をコールした加藤レフェリー。NBAにはないルールであるUFについて意見を求める、NBAのスーパースター、レブロン・ジェームズ(レイカーズ)、ケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)、ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)、アンソニー・デイビスに取り囲まれたシーンが、世界中のバスケファンの間で大きな話題となった。 ――憧れを持つ人が多いアメリカ代表と同じコートに立った気持ちを教えてください。 加藤 普段はファンとしてNBAの試合も見ていますが、審判としてそこに立つとなると完全な仕事モードになってしまいます。話題になったあのシーンもBリーグの試合中に選手たちとコミュニケーションを取るのと同じ感覚でしたので、あのレジェンドたちに囲まれているという意識は全くありませんでした(笑)。 ――NBAのスーパースターたちを束ねていましたね?(笑) 加藤 NBAルールにはないアンスポーツマンライクファウル(UF)という種類のファウルでしたので、FIBA(国際バスケットボール連盟)ではどういう取り扱いなのか? アンスポーツマンライクファウルというネーミング(スポーツマンらしくないファウル)はどうなのか? など彼らもNBAとFIBAのルールの違いは認識していたはずですが、その確認のためのコミュニケーションでした。Bリーグでもよくある、フリースローの時間を利用した、プレーヤーからの丁寧な問いに、レフェリーとしても丁寧に答える、というやり取りでしたので、あの4人だという感覚はありませんでした。試合が終わってから携帯を見てみると、あらゆる人から同じ写真が送られてきていて、その写真を見てから初めて「あ、この4人があの場にいて、こういう風に見えていたのだ」とファンに戻ったあとに、ハッとさせられました(笑)。 ――ニッポンの「タカキ・カトウ」を世界に知ってもらいました。 加藤 個別の判定についてはコメントできない立場ですが、あのシーンをポジティブに捉えてくださっているバスケファンが多くいたことを後から知り、うれしかったです。現代のSNS文化では、誹謗中傷に苦しんでいる選手やレフェリーがいます。あのようなシーンもポジティブに楽しんでいただけたことは、恵まれていると感じました。 ――レフェリーの判定もバスケの一部として楽しむ。象徴的なシーンでしたね。