白内障治療の失敗は「レンズ選び」で起こる…値段が高いから良いとは限らない納得の理由
レンズの選び方は人それぞれ
対して自費診療の多焦点レンズは、手術代からレンズ代まですべて自己負担になり、合計90万~150万円ほどかかる。選定療養で選べるレンズと比べてバリエーションが豊富なので、患者の細かな希望に合わせてレンズを選ぶことができる。前出の赤星氏がその利点を解説する。 「レンズによっては老眼も治せるほか、緑内障や加齢黄斑変性症などを抱えていて、従来のレンズが不適合だった方でも使えるものもあります。光がにじんだり、まぶしく見えたりすることもなく、明るく鮮明な視界が得られます」 それらに加えるオプションとして、乱視の人には「トーリックレンズ」という選択肢もある。これまで紹介した3種類それぞれに乱視矯正機能を追加したレンズで、同じく単焦点レンズでは保険が適用され、多焦点レンズならば選定療養と自費診療の2種類から選ぶことができる。 トーリックレンズを使って白内障手術を行う場合、乱視の度数を細かく計算し、手術中にレンズの方向を厳密に合わせる必要がある。単焦点レンズなら保険が適用されるので、患者の負担は通常のレンズと変わらない。 「術後の乱視は眼鏡でも矯正できますが、乱視用眼鏡は床が浮いて見えたり、壁が傾いて見えたりして不快に感じる人も多い。トーリックレンズを使えば同時に乱視も治すことができます。 特に多焦点レンズを選んだ場合、乱視矯正は必須です。眼鏡がいらない生活を望んでいたのに、乱視のせいで近くも遠くも見えにくくなって、当院を受診された患者さんもいました。 ただトーリックレンズを入れる手術には高精度な術前検査と医師の技量が求められ、レンズの方向を誤るとかえって乱視が酷くなる場合もあります。扱っている病院もまだ少ないので、HPで事前に確認するか、診察の際に医師に聞いてみるとよいでしょう」(日本橋白内障クリニック名誉院長の赤星隆幸氏) 「若いから大丈夫」と高をくくっていると、知らぬ間に症状が悪化して選択肢も少なくなってしまう。できるだけ早く、後悔のない決断をしたい。 「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より
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