ハワイでも人気の信州サーモン、需要に供給が追い付かない! 国内外への販売拡大を見据えて行われている研究とは?
長野県水産試験場(安曇野市)が、県独自のブランド魚「信州サーモン」の成長を早め、養殖期間を短縮する研究を進めている。信州サーモンは近年人気で、需要に供給が追い付かない状態が続いており、期間の短縮で生産の拡大につなげる。研究は、成果を挙げるための方向性が見えつつあるという。 【写真】飲食店や宿泊施設の引き合いが強く、ハワイでも人気の信州サーモン
2、3年かけて重さ2キロほどまで育てて出荷
信州サーモンは、ニジマスと欧州原産のブラウントラウトを交配した養殖品種。一代限りで卵を産まないため、同試験場が稚魚を育て、県内の養殖業者に卸している。業者は通常、2、3年かけて重さ2キロほどまで育てて出荷している。昨年4月に軽井沢町で行われたG7外相会合でも提供された。
信州サーモンの出荷量は、2004年に水産庁が養殖魚として承認し、デビューして以来順調に伸びてきた。新型コロナ下で外食が控えられ、いったんは販売が落ち込んだが現在は回復した需要に供給が追い付かない状態だ。国内での販売拡大や海外市場の開拓を見据え、成長の早い信州サーモンを求める声は強い。
出荷量は412トンに回復
県園芸畜産課によると、09年度に200トンだった信州サーモンの出荷量は19年度に425トンに倍増。コロナ禍で20、21年度は300トン余に減ったが、22年度は412トンに回復した。
「信州サーモン目当てのお客さんが増えている」
県養殖漁業協同組合(長野市)の北村明彦参事(65)は5月下旬、米ハワイの日系スーパーが開いた県産品の販売会に信州サーモンを出品。3日間で600グラム入り約60パックを完売した。ハワイでの販売会は4回目で、北村さんは「信州サーモン目当てのお客さんが着実に増えている」と手応えを語る。
引き合い多く「2キロ未満の個体も出さざるを得ない」
養殖業者のカワグチ(安曇野市)には、取引先の飲食店や宿泊施設から信州サーモンに多くの引き合いがある。同社は通常、2年半~3年程度をかけて出荷の目安となる2キロまで育てているが、矢花功社長(74)は「(注文に応えるため)2キロ未満の個体も出さざるを得ない」と話す。
ノルウェー産サーモンが値上がりで国産の需要が高まる
同社は年に約2万匹の稚魚を仕入れ、同業者から途中調達する分も含めて30~35トンほどの信州サーモンを県内外に卸している。しかし、外食需要が低迷したコロナ下で稚魚の仕入れを抑制したため、現在供給できる個体が少ないという。ロシアのウクライナ侵攻を機にノルウェー産サーモンが値上がりし、国産サーモンの需要が高まったことも供給不足に拍車をかけている。
信州サーモンをさらに普及させたい
養殖業者でつくる信州サーモン振興協議会(安曇野市)の会長でもある矢花さんは成長の早い信州サーモンが生まれれば、販売拡大や生産コストの削減につながり、「養殖業者の収益性の向上が見込める」と期待。「信州サーモンは20年で全国的に名前を知られるようになった。需給のバランスを早いうちに整え、さらに普及させたい」と話している。